緑で覆いつくされた大地にヤギが草を食む。絵にかいたような平和な光景だがそれも短い期間だ。来月になれば蚊が飛び始め、続いて梅雨入り。そしてその後はお決まりの猛暑である。だから今は貴重な季節なのだ。
ミケとモンジロウが知り合ってから二年が過ぎた。
その間に他の猫は来なくなった。
野良猫というのは孤独なものだな・・・。
そんなミケの唯一の友達はモンジロウだ。
ヤギは温厚で人懐っこい。たまに興奮して突進してきたり頭突きをしてくるが、基本的には優しい性格だ。いや待った。この「突進」とか「頭突き」というのが問題があるのだろう。ヤギがペットとして一般化しない理由の一つかもしれない。
その他、ヤギのダメ出しをすればいくらでもある。
意外と大変だったのがウッドデッキの塗装の剥がれだ。モンジロウの行動する部分は半年も経たずに塗装が剥がれる。だからこうして頻繁に塗りなおしているのだ。
それとニオイだ。特に冬場はクサイのだが、これは土壌の活性が低下しているためだろう。以前は牧場のようなニオイと表現したが、今は馬小屋のような臭気にレベルアップした。きれい好きなマダムには耐えられないレベルだと思う。
さらに同じ所でオシッコをする習性があるようで、その部分は草が生えなくなった。
今年は早くもアゲハ蝶が羽化し庭を乱舞しているが、花には目もくれずにこの場所にやって来る。ヤギのオシッコを吸いに来ているのだ。
次々と蝶がやって来る。 吸蜜性の昆虫なのになぜオシッコを求めるのか知らないが、夢中になって吸っている。
ちなみにコーヒー豆のようなものが落ちているが、あれは全部ヤギのウンコだ。つまりウンコとオシッコのカクテルを喜んで吸っているのだ。
花畑で蝶が舞う姿は幻想的であるが、ヤギの糞尿に集まる姿は何とも表現が難しい。 そもそも蝶の姿を幻想的に感じるのは人間の勝手な妄想なのだろう。
そうしていると、北の空から轟音が鳴り響く。慌てて目を向けると、そこに現れたのはヘリコプターだ。
送電線の真横をかすめるように飛んでいくが、実際にあれは送電線の点検をしているのだ。おそらく高度は数十メートルしかないだろう。
ハシボソ夫婦の巣の真横を通って行った。
あまり刺激をしないでほしいのだが・・・。
この轟音に驚いたせいではないだろうが、ついにこの日、ハシボソ夫婦の卵は孵化したのであった。4月9日のことである。
2021年4月11日 公開