今年は三羽の子ガラスが無事に巣立った。 例年なら巣立ちから10日間くらいたつと子ガラスを連れてくるのだが、 今年はいっこうに姿を見せない。
ハシボソ夫婦は毎朝やって来るのだが、 いくら待っても子ガラスを連れてこないのだ。
子ガラスは森で待たせているらしく、池の周辺で時々声が聞こえるだけである。
お父さんが飛び去った後も、お母さんはそのまましばらく居残る。
三羽の子ガラスを育てるのは大忙しのようで、 常に食べ物を探しているのだ。
エサ台の次にカラス小屋の残り物を探す。
そして地面に降りて虫などを捕まえ、のど袋をいっぱいにして森に戻っていく。
のど袋の食べ物は、ほとんどを森で待つ子ガラスに与えるのだろう。
ところでお父さんはあまり採餌に熱心ではないが、 子育てをサボっているわけではない。
おそらく周辺の警戒などを担当しているのだろう。
5月18日
隣接する森の中から子ガラスの声が聞こえてきた。
行動範囲をこちらに広げてきたようだ。
静かに近づき探してみると、バサバサとカラスが飛び去るのが見えた。
だが一羽だけ逃げずにとどまっている。
あれは子ガラスだ。
キョロキョロと辺りを見渡し両親を探しているようだ。
さっき飛び去ったのはおそらく兄弟だろう。
子ガラスは私の存在に気が付き、慌てて隣の木に飛び移った。
子ガラスたちはすでに、
「人間を恐れる」ということを覚えたようだ。
それでいいのだ…。
しかしまだ子供。
旺盛な好奇心には勝てず、留まって私の方をじっと見つめている。
だが、これ以上近づくのはダメだ。 この時期の親鳥は非常に神経質になっているからだ。
ハシボソ夫婦が自ら子ガラスを連れてくるのを待つことにしよう。
5月26日 早朝
朝から子ガラスの鳴き声で騒がしい。
庭先に目をやると、左の枯れ枝にハシボソのお母さんがとまっている。
そのまま右を見ると、
もう一羽…。
これはお父さんだ。
さらに右に目をやると、モゾモゾ、ゴソゴソと茂みから子ガラスの気配がする
いた。 子ガラスだ・・・。
「一羽、二羽、三羽・・・。」
子ガラスはちゃんと三羽そろっている。 巣立ちから今日まで無事に成長していたのだ。
一羽の子ガラスがパーゴラの上までやって来た。
「アバー、アババババ」と、小さく甘えた声を出している。
兄弟たちもやって来た。
「全員集合!」
兄弟そろって集合写真だ。
あの壮絶な巣立ちから19日が過ぎた。
鉄塔の巣で過ごした日々はもう過去のもの。
今年の夏は賑やかになりそうな予感・・・。
2019年5月26日公開