大学の構内に並ぶクスノキ。
よくみると手前の木は葉が少なくスカスカの状態だ。
クスノキの周囲の地面をみると、 まるで台風の通過後のように小枝が散乱している。
これはいったい?
真相はこれだ!
周辺では無数のハシブトガラスの声が響いている。
そして向こうのクスノキに目をやると、 枝という枝にハシブトガラスがとまっているではないか。 周辺を含めると100羽以上いる。
足で細枝にぶら下がり、クチバシにも小枝をつかんでいる。
こんなにデカい鳥がぶら下がるものだから、クスノキとしてはたまったものではない。
最初にみたスカスカのクスノキは、こいつらの仕業だったのだ。
だけどなぜ、クスノキの枝をちぎっているのか?
このカラスは何かくわえている。
拡大してみよう。
これはクスノキの実だ。
実をチマチマ取るのが面倒なので豪快に枝ごとちぎっているのだろう。
確かにカラスも木の実を食べる。 だがこんなに大挙して押し寄せ、奪い合うほど好物なのか。
なるほど、おもしろい。
そんなものが好物なら、我が家のカラスたちにも食べさせてやろう。
クスノキなら我が家の庭にもある。
実の大きさは8ミリくらい。
夏場は緑色だったが、熟すと黒くなる。
ちょうど今が食べ頃だろう。
分解してみよう。
帽子を外すと黄色い部分が見えてきた。
実を割ると大きな種が現れる。
それにしてもこれ、食べる部分がほとんどないようだが…。
カラスの食欲を満たすには100個くらい食べないと追いつかないのではないだろうか。
さて、この木の実はどんな味がするのか?
試しに食べてみよう。
口に入れるとうっすら甘みを感じる。
「これは意外といけるかも」と思った次の瞬間、 甘みを打ち消すように渋みがはしり、 クスノキ特有の香りが口いっぱいに広がる。
これは食べるにはちょっと適さない。
だが特殊な需要はあるのではないだろうか。 例えばカクテルのフレーバーとか。
それでは、アディに食べさせてみよう。
しかし、アディの反応は鈍い。
最初は食べ物とは思わなかったようで、 クスノキの実をおもちゃにして遊んでいた。
しかたないので実をつぶして中身を見せてやる。
すると、おそるおそる口に入れ、ようやく食べ物だと認識したようだ。
それからは自分で分解して食べるようになった。
最初にブチっと実をつぶし種を出してから食べる。
だが特に喜んで食べている様子ではない。
美味しくはないのだろう。
アディは小屋の奥のほうに行った。
戻ってきた…。
私が実を与えるたびに隠していたのだ。
つまり、急いで食べるほどでもないので 貯蔵して空腹時に食べようということだ。
ハシボソ夫婦はどうだろうか?
ハシボソガラスは植物食志向といわれているので、 喜んで食べるかもしれない。
いつもの時間にクスノキの実を置いてみる。
さて、どうかな?
だがしかし・・・、
エサ台に近寄ろうともしない。
なにか怪しい気配を感じたのか?
そうしているうちにスズメがやって来た。
しかし、スズメたちもクスノキの実には興味がないようだ。
しばらく待っていると、ようやくハシボソ夫婦がエサ台に降りてきた。
しかしクスノキの実には見向きもせずに去っていく。
どういうことだろうか? 大学のカラスたちはあんなにクスノキの実を食べていたのに。
「あっ、そうか・・・、」
考えたら当たり前のことだった。
木の実は木になっているから木の実であって、 分離して皿の上に並んだ状態では何だか怪しい黒い玉。 とても食べ物には見えなかったのだろう。
2018年12月23日公開