今年も鉄塔に巣を作り始めたハシボソ夫婦。 彼らは巣作りのベテランである。今まで生きてきた中で何個の巣をつくったのか知らないが、ちなみに昨年は二度も巣を撤去されたおかげで一年で3個も作ったのだ。
これは3月6日の様子だが、この頃には巣はほとんど出来上がっていた。
そして運んでくる材料が木の枝から綿状のものに変ったが、これは巣の底に敷き詰める保温材だ。 こうして内装工事に取り掛かったということは、まもなく完成ということである。
3月8日、お父さんが動物の毛をくわえてエサ台にやって来た。
毛の束をくわえたまま器用にエサを取った・・・。
昨年の観察記録によるとカラスの巣は20日間で完成するということが分かったのだが、今年もだいたいその通りとなった。
3月15日、夫婦そろって巣に戻ってきた。
そしてお母さんはそのまま巣の中に座り込んだ。すでに産卵を終えて、今は卵を温めているのだろう。3月9日から14日までの間に産卵したようだ。
時々、夫婦で巣の中を覗き込んでいるのだが、卵生の動物の場合、我が子が「誕生した」という起点はどこになるのか興味深いものだ。 卵を愛おしく見つめる姿からは、卵を産んだ時点で誕生という認識なのだろうか?
3月中旬を過ぎた辺りから急速に地面の草が成長してきた。モンジロウが待ちわびた春の到来だ。
庭を彩る花たちもヤギのオヤツ・・・。
モミジがいち早く芽吹いたが、それもヤギのエサに。
昨年よりも背が伸びたモンジロウは手が届く範囲が広がった。
春の到来に動物たちもご機嫌だ。
ところで、鳥の抱卵というと常に巣に座り込んでいる雌に対して雄が給餌するというのが定番だ。 しかしこのハシボソ夫婦の場合は抱卵期間においてもお母さんが自ら採餌のために外出することが多い。
↑抱卵中の妻を放置して食事を楽しむお父さん。
そして完食・・・。その後の行動を追跡するも巣に戻らないことが多かったのだ。
しかし今年は少し違う。
お母さんが巣にいる時間が例年よりも長く、採餌に出かけることが少ない。エサ台にもまったく来なくなったのだ。
さらに・・・。
お父さんの行動を監視していた私は、ついに抱卵中の妻のためにエサを運ぶ姿を捉えたのだ。
一般的にはごく普通の光景であるが、この夫婦では非常に珍しいことだ。
何かがいつもと違う、何だか違和感のある今年のハシボソ夫婦であった。
2021年3月28日 公開