「カラスの行水」という言葉が古くからある。 池や川で水浴びをするカラスを見た昔の人が、その素早く水浴びを済ませる様子から思いついた言葉だろう。 もちろん「カラスの行水」はカラスに対しての言葉ではなく人間に対して使う言葉である。入浴時間が短く体を十分に洗わない人を揶揄する言葉だ。
それでは、その言葉の元となったカラスはどのように体を洗っているのだろうか?
元祖、「カラスの行水」を見てみよう!
勢いよく浴槽に「ピョンッ」と飛び込む。
体を深く水に沈める。
そして体を振動させて羽毛の内部の汚れを落とす。
体の向きを変えながら丁寧に。
仕上げに尾羽を広げて揺らす。
完了!
この間だいたい15秒くらい。
水浴びの時間が短い理由は、その瞬間は無防備であるためなるべく手短に済ませるということだろう。 しかしその短時間のなかでも要領良くきちんと体を洗っているのだ。
そして、この後が重要。これからゆっくりと羽繕いの時間が始まるのである。
風呂から上がるとまずは体を「ブルルッ」と、震わせて水を飛ばす。
首を長く伸ばし首元の羽毛を繕う。
風切羽は一枚ずつ丁寧に仕上げる。
尾羽も同様に。
クチバシで挟み「スパッ」と、滑らせて整える。
頭の羽毛の手入れには足を使う。
背中の手入れも忘れずに…。
そもそも生涯水浴びをしない動物の方が多いなかで、毎日のように水浴びをするカラスは非常にきれい好きであると言えるのだ。
「カラスの行水」という言葉の意味が将来、きれい好きな人を褒める言葉になるのかもしれない。
2020年1月5日 改訂版を公開 旧「カラスはきれい好き」はこちら
2016年12月3日 公開