近くでみるカラスは意外に大きい。そして活発で騒々しいのだ。そんなカラスを飼育するにはそれなりの環境が必要になる。なかには屋外で自由に飛ばしている飼育者もいるが、天敵のオオタカや周囲のカラスに襲われるリスクがあるのでお勧めはできない。ここでは、室内での飼育や庭に小屋を設置して飼育する方法を紹介していく。
カラスは鳴き声が大きく騒々しい。そのため住宅密集地においては室内飼育以外に選択肢はないだろう。しかしカラスを室内に放していると、そこらじゅうがフンで汚れ、物を壊される。それを許容できるならよいが、たいていの人には無理だろう。そこで室内にケージを設置するか、部屋に仕切りを入れて飼育することになる。
このケージは室内の隅に金網を追加して、簡易のケージを制作した事例である。床面積は約一畳であるが、最低でもこの広さは確保したい。しかしこのサイズのケージでもカラスにとっては窮屈なため、一日に一回はケージから出して室内に放ってやろう。
理想としては、窓があって上部に換気扇があることが望ましい。窓の追加は難しいが換気扇は後から設置できるので、最初につけておいた方が無難だろう。
どうしても臭いが我慢できない場合は壁面をアクリル板やガラスにするとよいが、その際はケージ内の温度の上昇に注意が必要である。
枝の配置には工夫が必要である。まずは壁沿いの高い位置に枝を配置しそれを寝床とする。そして窓際で日光浴できるところと手前の給餌スペースにも枝を設置する。このとき、フンが落下する場所を考慮し、そこに汚れては困るものを設置しないようにする。
床はこのように金網を張りその下にトレーを設置する。そうするとフンは金網を通過して下のペットシートに落ちるようになる。一日に一回程度、ペットシートを交換すればよいのだが、金網にもフンが付着するので金網は取り外せるような設計にして水洗いできるとよいだろう。
室内に設置する飼育ケージ ←作り方
カラスは水浴びを好むのだが、この場所に水桶を設置すると部屋の床が水浸しになってしまう。水浴びは時間を決めて浴室等で行うしかないだろう。
あるいは、もし部屋が余っているのなら、カラス専用の部屋を用意するのがよいだろう。 上下水道の改造が可能なら、バスルームのような床にすれば糞の掃除は簡単だ。
睡眠時間に注意する
室内飼育する場合の注意点だが、カラスは猫などと違い完全に昼行性ということだ。周囲が明るくなると起床し、暗くなると寝る。起きているあいだの基礎代謝は非常に高く、逆に寝ている間は体力の消耗は少ない。そのため室内で飼育する場合は、夜中まで明るくするのは避けるべきだ。
室内でも止まり木は必須
ケージに入れずに室内で自由に飼育する場合においても、止まり木は必須である。カラスは樹上生活の鳥であるため、足の構造は枝につかまった状態が最も安定するようにできているからだ。床の上ではその機能は働かない。特にフローリングの床は最も苦手なのだ。
爪切りは控えめに
翼が不自由なカラスの場合、足の動きだけに頼って移動するのだが、そのときに爪が重要な役割を果たす。そのため爪を切ると足場が安定せずに頻繁に落下するようになるので、必要以上に爪を切ってはいけない。
寝床の設置
カラスは寝床にこだわりを持っている。寝ている間は無防備なため、外敵に襲われないような場所を本能的に求めるのだ。室内飼育においてもそのような場所を用意しよう。
なるべく高い位置で背後の二面が壁になるような場所に枝を設置しよう。そうすると夜は例外なくそのポジションで寝るようになる。カラスの足の指(趾)は、就寝中に無意識の状態でも枝につかまり安定するようにできている。
たまには日光浴を
日光浴を必要とする確かな根拠は不明だが、やはり昼行性の動物であるため、なんらかの効能がある可能性はある。日光浴をさせるには部屋の窓を開けて網戸にし、陽の光を直接あてる。この時、夏場の直射日光には耐えられないので温度管理に注意が必要だ。
タバコの煙や化学物質に注意
鳥類は空気中の煙や化学物質に敏感であるため、室内でタバコを吸わないようにしよう。同様に蚊取り線香の煙を室内に充満させるのも避けるべきだ。
その他、人間が許容できる化学物質でも鳥類には害を及ぼすものもある。例えば、フッ素樹脂から発生するガスは鳥類に強い毒性を示すので注意が必要だ。フッ素樹脂はフライパンなどの調理器具やアイロンの表面をコートしているもので、これを加熱したときに発生するガスが鳥類に対して毒ガスとなるのである。これらの調理器具を使用するときには必ず換気扇を作動させよう。
カラスを飼育するうえでネックになるのはフンの掃除と臭いだ。そこで屋外飼育であれば掃除に水道を使えるし、臭いの問題からも解放される。しかし庭に小屋を設置する場合はある程度の広さが必要なことと、鳴き声が近所迷惑にならないように配慮する必要がある。
窓に沿って小屋を設置する
屋外で飼育する場合は庭に大型の鳥小屋を設置し雨や直射日光を防ぐ構造にする。
カラスは夏の直射日光には耐えられないので断熱性のある屋根が必要となる。
小屋の床面積は2畳以上、高さは180cm以上を目安にしよう。
このカラス小屋の背面は屋内の窓とつなげてあり、このように室内からカラスの世話ができるようになっている。
このようにすれば、屋外飼育でありながら室内飼育のような雰囲気になる。
小屋の床には金網が張ってあり、その下にこのようにトレーを差し込めるようにレールがついている。
掃除するときはトレーを引っ張り出して水洗いする。
カラス小屋の制作 ←簡易なカラス小屋の製作法
移動式の飼育小屋
飼育小屋は必ずしも地面に固定する必要はない。下の例のように、床に頑丈なフレームを入れてタイヤを取り付ければ「カラスの動く家」の出来上がりだ。
ただし、小屋の重量には注意が必要だ。一人で押して動かせるサイズは床面積で二畳くらいが限度だろう。
これまでの小屋と同様に床には金網を張るが、その下は地面である。つまり毎日移動させることでフンの掃除が不要となる理想的な小屋なのだ。そして毎日景色が変わるのでカラスにとっても飽きない環境だろう。
これの欠点は、固定式の小屋に比べて不安定であり突風に弱いことである。台風が接近した際には、小屋を安全な場所に退避させてロープで固定するなどの対策が必要となる。もう一つ、これは当たり前だが地面が汚れることである。対策はフンを生分解できるような土壌にすることだ。
本格的な飼育小屋
短期間で完成する小屋というのは結局は長持ちしないのだ。そこでお勧めは、建築用木材を使用した本格的な小屋である。
カラス小屋の制作 ←本格的なカラス小屋の製作法
小屋の内部はFRP(強化プラスティック)を施工してある。そして床は排水溝に向かって滑らかに傾斜しているので、床を水で流しやすくなっている。
床が防水構造であるため、風呂も室内に設置できるのだ。カラスが水浴びをしたときに水が飛び散っても問題はない。
簡単に水洗いができるのが利点であるが、水がかかる部分の木材は耐水性に優れたものを選ぶ必要がある。そもそも木にこだわらずに鉄骨造りでもよいのだが、その分、コストと技術が必要になるのだ。
ここでも重要なことは寝床である。天井に近い高さで背後が壁になるような場所に枝を設置しよう。
本格的な小屋を作る際に注意点がある。それは、ある要件を満たすと固定資産税の課税対象となることだ。さらに床面積によっては建築確認申請が必要になる。その辺の法律をよく確認してから設計に取り掛かってほしい。
暑さに注意
屋外に小屋を設置して飼育する場合、気を付けなければいけないことがある。カラスは寒さには強いが意外と暑さに弱いということだ。だからといって北側の日陰はよくない。太陽光が差し込むところで、屋根を断熱素材にするなどの工夫をしよう。真夏の昼は扇風機をつけてやろう。
寒暖差に注意
カラスは寒さに強いのだが、それは秋から徐々に寒さに慣れて羽毛が冬毛に変わるからである。そのため室内飼育していたカラスを真冬に突然屋外に移すのは禁物である。夏の暑さも同様であり、冷房の効いた室内で飼育していたカラスを突然、酷暑の屋外に出すことは避けるべきだ。
動物の侵入に注意
野生のカラスの天敵はオオタカなどの猛禽類であるが、飼育下においては猫やイタチが強敵となる。猫が入れないように隙間をふさぐことはもちろんのこと、問題はイタチである。イタチの体は柔軟性に優れており、ネズミが通過できる隙間があれば侵入してくるのだ。しかもイタチは非常に狂暴な性格をしており、自分よりも大きな相手でも襲撃する。イタチを完全に防ぐには、金網の目のサイズは25mmくらいで線径2mmのステンレス製にするとよい。
近隣住民への配慮
カラスはとにかく声が大きいので、近隣に迷惑が掛からないようにしよう。カラス愛好家は忘れているかもしれないが、カラスは「イメージの悪い動物」という側面もあるのだ。つまりカラスを嫌う人は多いということだ。そのためカラスを飼っていると役所や警察に通報されることもある。そうならないためには、あらかじめ近所の理解を得るか、外から見えないように飼うなどの配慮が必要である。
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2017年8月27日 公開