カラスブログ2017年12月24日 白髪のカラス

カラス

アディは幼鳥のころに羽を骨折し飛べなくなった。 だがその自覚が薄く、飛ぼうとしては落下することを繰り返し、 ついには左の初列風切羽が全部取れてしまったのだった。


カラス

これは2か月前の画像。カラス小屋に落下防止柵を施したおかげで怪我も減り、 新しい風切羽が伸びてきた。

風切羽が伸びる過程では、まずストローのような鞘に覆われた羽軸が伸びてくる。 そしてその先から筆のように羽が展開して徐々に形を整える。

だがしかし、今回は一本だけ白いのが生えてきたのだ。


カラスの白髪

それから1週間がたち、真っ白な羽が出現した。

おそらく度重なる打撲による皮膚への刺激により、 皮膚組織中のメラノサイトが欠落したのだろう。

メラノサイトとは、メラニン顆粒を生産し皮膚や羽毛に供給する細胞である。 皮膚の深部に存在する重要な細胞だ。



カラスがもつ「黒」の色素は昨年の記事の 「黒さの秘密」で紹介した通り、 羽の内部にメラニン顆粒が豊富に存在するためだ。

カラスの羽の電子顕微鏡画像

電子顕微鏡でカラスの羽の内部を観察すると、このように黒い粒子がたくさん見える。 これがメラニン顆粒であり、羽を黒く見せる色素でもある。 これにより強い太陽光から紫外線を遮ったりしてくれるのだ。 アディの白髪は、この黒い顆粒が全く無い状態である。

画像の基質の部分に微細な線維状のものが見えるが、 これはケラチン線維である。 羽の強度はこのケラチン線維によるものだ。


カラスの白髪

さらに2週間が経過した。

ほぼ伸長した羽は真っ白だ。 そういえば、今年の4月ごろのニュースで全身が真っ白なアルビノのカラスが紹介されていたが、 もしかしてアディもあのような白いカラスになってしまうのか!?

いえ、そんなことは無い。

アルビノは先天的にメラニンをつくれない遺伝子疾患であるが、 アディのは刺激による一時的なメラノサイトの欠落である。 だからアディがこの先、アルビノに変異するわけではなく、 おそらく一年もすれば元の黒に生え替わるはずだ。


アルビノのハト

カラスのアルビノはおおいに話題になったが、 右の画像のように、街中にたむろする土鳩にもたまにアルビノがいる。 眼やクチバシ、足に至るまでメラニン色素を欠いた完全なアルビノであるが、 これについてはほとんど話題にならない。

まぁ、カラスは黒一色というのが当然の認識であり、 そこに突如、真っ白のカラスが現れたインパクトは絶大だろう。

その、「黒一色」がトレードマークのカラスであるが、 世界には白黒パンダ模様のカラスも存在する。


それがこれ ↓

ムナジロガラス

これはムナジロガラスというアフリカ大陸原産のカラスだ。 その名の通り胸の部分が白くパンダのような模様が特徴である。 もちろん遺伝子疾患ではなく、進化の過程でこのような模様になったのだ。 なぜこうなったのかは分からないが、生物の進化には全て理由がある。 よって、何らかの事情でこうなったのだろう。

このカラス、ペットショップで30万円くらいで売っているのを見かけるが、 アフリカの地元民が聞いたら「カラスに大金を払う人がいるの!?」と、笑ってしまうだろう。 日本で例えると、公園にたむろする土鳩を30万円で外国人に売るようなものだ。

このカラスは昨年の4月に「神戸どうぶつ王国」という動物園で撮影したものだ。 この動物園は手懐けた動物を園内に解き放ち、 来園客はそれに触れたりエサをやったりもできる。 最近、流行りのふれあい型動物園だ。


話が逸れたついでに園内をすこし紹介しよう。

水鳥

園内はテーマごとにいくつかに区切られ、 動物が放し飼いになっている。

来園客の中には本格的なプロ用のカメラを持ち込み撮影している人が多くいる。 野鳥の撮影は非常に難易度が高いが、 ここの鳥たちは動きが遅いので撮るのが容易だ。 だがそれは、海釣りを諦めて釣り堀に行くことと似ている。

この撮影者たちはおそらく、野外での野鳥の撮影を諦め被写体をここに求めたのだろう。 だが、プロを目指していた頃の自分に対し、どこか後ろめたい。 「はたして俺はこれでいいのか?」と自問するが「仕方ないさ…、」と言い聞かせる。 そして心の葛藤を沈めながら黙々と撮影するのだ。

と、撮影者をながめながら勝手な想像をしたりする。


水鳥

園内には多くの水鳥が飼われており、彼らは物欲しそうに通路をウロウロしている。 この鳥たちには園内で購入したエサをやれるようになっているが、 これは「鳥たちと仲良くなってください」、という園側のはからいだ。

粋なサービスである。

だが、来園客の中には 「客人たる来園者からエサ代を徴収したうえで、本来なら飼育員がするべき労働をさせている。」 という見方をする人もいるかもしれない。 冷静に考えるとそれは紛れもない事実ではあるが、 そんなことを気にしていてはこの園では楽しめないのだ。


水鳥

歩く先々に動物が立ちはだかる。 園内の動物は鳥類が多いが、哺乳類や両生類もいる。 動物たちはどれも人に馴れていて、声をかけると近くに寄ってくる。 来園者との交流に特にストレスを感じていないように見える。


カピバラ

人に馴れたカピバラも。

枝野元官房長官のおかげで人気が上昇した動物だ。


レッサーパンダ

大人気のレッサーパンダだ。

だが、この日はタレパンダのようにだらしなく寝ている。人気がありすぎて疲れたのだろう。


謎の動物

何でしょうこれ?

どうしても思い出せない地味な動物もいる。


オオハシ

これはオオハシ。クチバシのお化けのような鳥だが、人に馴れていて愛嬌を振りまいている。


インコ

極めつけはこれ。園内に仕切られた特設のふれあいコーナーだ。

ただのインコに見えるが、こいつらが実に優秀な「従業員」なのだ。


インコ

エサの販売機を見つめるオカメインコ。

インコたちはエサの販売機まで客を誘導しエサを買わせる。 そしてそれを食べ終えてはまた、おねだりをするのだ。

エサが入ったカプセルは一個100円也。


インコ

指にぶら下がり愛嬌を振りまくインコ。 こうして煌びやかな衣をまとい客に甘える姿は…。

はて? どこかで聞いたような。


そして園をあとにする客たちは皆、かりそめの動物たちとの触れ合いの余韻に浸る。 そして、その余韻が覚めやらぬうちにインスタなりブログなりで発信するのであった。


以上、

アディの白髪の話が、いつのまにか動物園のレポートに変わっている今日の記事でした。



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2017年12月24日公開

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