11月に入ったあたりからオオタカが飛来することが多くなった。
彼らの狩りのスタイルは上空から獲物を探すよりも、 茂みに身を隠して待ち伏せすることが多い。
11月25日。私はこの日もオオタカを探しに森に入った。
水辺の森には様々な種類の鳥がいる。
これはカワセミ。
水面を凝視し小魚を探している。
その他、カワウやサギなども多い。
だが、この場所でオオタカが狙うのはカモだろう。
鈍足な水鳥は格好の標的である。
羽毛の色は保護色なのか意外に見つけにくい。
そうかと思えば、マガモのオスはこのような派手な色をしている。
私の観察によると、オオタカはこれよりも少し小型の水鳥を狙うことが多い。 選ぶ余裕があるなら、ということだろうが。
ここで突然、歩いて通り過ぎた後ろの方から物騒な音が聞こえてくる。
振り返るとそこにはスズメバチがブンブンと飛び交っているではないか。
あれはオオスズメバチの巣だ。
そういえば今年の5月に女王蜂がこの辺をウロウロしていたが、 この場所に巣を構えたようだ。
危なかった。
オオスズメバチは地中に巣を作るので、まるで地雷のような存在である。
あんなのまともに踏んだらレスラーでも死ぬ。
冷汗が出るほどビビったが、体制を整えて撮影に挑む。
ターゲットをスズメバチに変更だ。
オオスズメバチは世間で言われているほど狂暴ではない。
刺激しなければ襲ってくることはないのだ。
「刺激しなければ」
という話ではあるが…。
仲間同士でハイタッチしている。
観察していると、まっすぐ巣から出る蜂と、周囲を旋回しながら出てくる蜂がいる。
後者は巣の周辺の防衛を担う蜂だろう。
身を低くしてさらに近づいてみよう。
近くで見るオオスズメバチは凄い迫力である。
時々、私のすぐ後ろを通過して巣に戻っていくヤツもいる。
耳元で聞く羽音は恐怖の旋律だ。
まるでパンチパーマにサングラスの昔のヤクザみたいな感じだ。
オオスズメバチの観察を続けること二週間。
ここ数日は朝に霜が降りるほど寒くなり、 蜂の数は激減した。
12月8日
ついに蜂の巣は沈黙した。
落ち葉に覆われてよく見えないが、 意外と深い穴を掘ったようだ。
巣を覗きこんだ次の瞬間!
いきなり一匹の蜂が飛び出してきた!
油断していただけにその恐怖は今年一番であった。 だがそれを文章で伝えるのは難しい。 例えるなら全身の毛が一瞬で逆立つような感じと言えばいいか。
まだいたのか…。
時間をかけて観察していると、 3分間に1匹くらいのペースで巣を出入りしている。
以前に見たような巣を防衛する役割の蜂はいないようだ。 皆、わき目もふらず巣を出入りしている。
12月16日
巣を出入りする蜂は完全にいなくなった。
3日前に他よりも大型の蜂が巣から出ていくのを目撃したが、 もしかすると次世代の新女王蜂だったのかもしれない。
おそるおそる巣穴にカメラを入れてみるが、 穴は思ったよりも深いようだ。
巣の入り口はまだ先にあるようでここからは見えない。
今度、穴を掘って巣を発掘しようと思う。
ところで、最初はオオタカを観察するはずだったのだが・・・、
途中からすっかりオオスズメバチの観察になっていたのだった。
2018年12月16日公開