あらゆる動物のなかで加熱したものを食べているのは人間だけである。 それは火を使うことができる唯一の動物だからだ。 朝から熱湯でいれたコーヒーを飲み、 昼には熱々の麺類。その他、温められるものはなんでも電子レンジに放り込む。 考えてみると、他の動物とは一線を画す現代人特有の習性である。
それでは、人間以外の動物は熱いものを食べることができないのだろうか? さっそく、自然界のカラスを相手に検証してみよう。
まずは電子レンジで温めた牛肉をエサ台に置いてみた。 やって来たのはハシボソのお父さん。
牛肉の温度はだいたい焼肉と同じくらいになっている。
もくもくと沸き立つ湯気に戸惑っているが、 おそらく彼にとって初めて目にする現象だろう。
戸惑いながらも、ひときれの牛肉をつまんだ。
驚いている様子だ。
野生に生まれた彼にとっては衝撃的な感覚だろう。
ゆっくりな動きである。
熱い脂が口内に入らないように慎重になっているようだ。
もうひときれの牛肉を残しエサ台をあとにした。
近くの木に移動した後もクチバシの先に牛肉をぶら下げたままだ。 そのまま飲み込んでいいものか悩んでいるのだろう。
やはり人間以外の動物は熱さに耐えられないのか?
後日
前回は初めての感覚に衝撃を受けていたようだが、 こういうことは何度か試さないと分からないのである。
カラスバーグを電子レンジで20秒間加熱すると、 だいたい70℃以上になる。 かなり高温のように感じるが、レストランで提供されるハンバーグもだいたいこのくらいの温度である。
よほど猫舌の人でない限り問題ない温度だろう。
これを冷めないうちに急いでエサ台に置く。
二回目なので慣れたのか、立ち昇る湯気を気にすることもなくクチバシを伸ばした。
しかし、前回同様に動きは慎重だ。
おもえば人間も熱いものを運ぶときは慎重になるものだ。
よく見るとカラスバーグを口元までがっちりと咥えている。
カラスの口内は熱さに対する耐性が備わっているのだ。
ホフホフと口から湯気を出しながら食べている。
その姿はまるで、熱々の肉まんを食べている人間のようだ。
こうして彼は、二度目にして熱さを乗り越えたのであった。
~結論~
カラスは猫舌ではない
2019年2月24日公開