この三毛猫はいつも我が家に朝食を食べにくる野良猫だ。
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今年の2月に発情していたが、その後どうなったかというと…、
それはこの太り具合を見てもらおう。
「あぁ、やっぱりか…、」という一言が漏れる。
今年の春のことだ。
そしてこの太った猫は去勢済みの地域猫♂
彼の名は「ハクホウ」
去勢されているはずだが、なぜかミケを追いかけている。
だがしかし、いくら想いをよせてもなしのつぶて。
いつものとおりミケに冷たくあしらわれる。
春のある日、ミケの様子をじっくり見ていると…、
そう、お腹がへこんだのだ。 どうやらどこかで出産したらしい。
猫には夫婦という概念がないので、 子育ては専ら母親だけの仕事である。
それに比べてオス猫は気楽なもんだ。
これ以上、野良猫を増やすわけにはいかない。
子猫は私が責任をもって面倒を見るべきだと考え、
周辺を探すのだが気配すらない。
それから一か月が過ぎた。
子猫の隠し場所を探すため私はミケのあとを尾行した。 歩くこと200mくらい。 意外と気づかれないものだ。 すると一軒の民家の前にミケは立ち止まり、 そこで大声で鳴いている。 そう、ミケの第二の家はそこだったのだ。 第二というか、むしろここが本家だろう。
その家の主は地域猫の活動をしている方だった。 ちょうど前日に、ミケが外出中に子猫たちを捕獲したということで、 ミケが大声で鳴いているのはそのためだ。
とにかく子猫は発見できた。
← それがこれ。
同じ模様の子猫がもう一匹いる。
保護したのは両方ともオスで、この時で推定生後40日くらいかな。 乳離れしたところだと思う。
その家はすでに猫屋敷のごとく猫があふれ定員オーバーだったため、 とりあえず私の家に連れて帰った。
まだ人間を恐れることを知らない無垢な子猫たちだ。
だが私は、わが子を奪われた母猫の執念を侮っていた。
その時、外ではミケが奇声をあげて我が子を探していたのだ。
食事が済んだならさっさと帰ればいいのに、 こうして我が家を覗きこんでは疑いの目を向ける。
今、子猫に鳴かれたら終わりだ。居場所がバレてしまう。
かすかに「ミー、ミー」と鳴く子猫の声に瞬時に反応したミケ。
二日目にしてあっけなく子猫の居場所がバレてしまった。
ミケは気性の荒い野良猫なので攻撃されるのかと思ったが、 それはなかった。
だが、ものすごい怨念のこもった声を私に浴びせかける。
子猫たちはというと、 外で喚きちらす母猫の声に反応はするものの、 それほど寂しくはないようだ。
室内の心地よさと安定した食事に満足し、ここを離れようとはしない。
私はなんだか誘拐犯になったようで気分はすぐれない。
というか実際、誘拐犯に違いはないだろう。
我が子の居場所を突き止めたミケは「子猫を返せ」と鳴き続ける。
その金切り声は凄まじいものだ。 気の弱い人ならノイローゼになるだろう。
だが、いまここで子猫を返したらこれまでの苦労は水の泡。
そんな時、猫の声を聞きつけた近所の爺さんがアドバイスをくれた。
曰く、「そういうときはな、 必ず一匹は親元に残しなよ。そうすると騒がないから。」 とのことらしい。
それはその通りだと思う。
でも、そのやり方だと徐々に野良猫が増えていくことになるが…。
叫び疲れ声もかすれてきたミケ。
それでも「子供を返してくれ」と声を振り絞り懇願する。
猫のためと割り切っていたつもりだが、 さすがにこれには胸が苦しくなる。
ミケの声を聞きつけ、ハクホウが現れた。
子供を失ったミケに対し、チャンスを見出したのか?
彼は悪い奴ではないが、空気を読むことは得意ではない。
傷心のミケの心を掴もうと必死にアプローチする。
だがハクホウは優しい男だ。
ミケに強引に迫ることはなく、 こうして距離をとって見守っている。
ミケの異変に気が付いた者はここにも。
これはボスの子分のスネ夫。 隙あらばという下心が丸見えだ。
こういう場面の解説で
「オス猫は自分の遺伝子を残すために必死」
というのを聞くが正確にいうとそれは間違いだろう。
「よーし、子供作るぞー!」なんて計画的なことを思っているわけはなく、 抑えきれない短絡的な性的衝動である。
だがしかし、その衝動は本能からくるものであり、その結果、子孫が繁栄するのである。
結果は同じだが現場で考えている目的が全く違うということだ。
この状況ではミケは再度妊娠、出産してしまうだろう。 若いメス猫が屋外にいるというのはそういうことだ。
しばらく考えた末、意を決してミケを捕獲し避妊手術をすることに決めた。 でないと、この地域が猫だらけになってしまうことは明白だ。
だがしかし、まったく人に馴れていない野良猫をどうやって捕獲するのか?
そこで用意したのがコレ ↓
アライグマを捕獲するための罠である。
紐を引くと手前のゲートが閉まるようになっている。
失敗は許されない状況だったが、 意外にもあっさりと捕獲完了。
ミケは今、怒声をあげて激しく威嚇している。
「裏切りやがったな!」
まるで危険な野生動物を捕獲したときのような緊張感だ。
こうして捕獲されたミケは、このまま動物病院へと搬送されたのであった。
そして無事に退院・・・、
避妊手術を終えたミケ。
もう我が家に来ることは無いだろうと思っていたが、 二日目には姿を現した。
憮然とした表情で朝食を要求している。
まだ少し怒っているようだが、
「それとこれとは話が別」ということらしい。
やはりメス猫はしたたかだ。
ところで戻ってきたミケの姿に違和感が・・・。
そう、右耳が大きくカットされたのだ。 避妊手術済みのメス猫には右耳にV字のカットを入れるのだが、 これはいくらなんでも切りすぎだ。しかも切り方が雑。 野良猫とうことで、おそらく新人助手の練習台にされたのだろう。
腹立たしいが苦情を言っても耳が戻ってくるわけではない。
いずれにしても、ミケはもう子供を産むことは無い。 何が正解なのかわからないが、仕方のないことだと言い聞かす。
だがしかし、猫の視点から考えてみれば実におぞましいことだ。
母親から子供を奪い、それに飽き足らず母親を捕らえて避妊手術を施す。 もし、人間社会で同じことをやったなら私は死刑になるかもしれない。
子猫たちは二匹ともすくすく育っている。
特に左の猫は異常に食欲があり、右の猫の二倍速で成長している。
この大きい方の猫はすでに里親が見つかり、今は別の家庭で暮らしている。
そして残された子猫は結局、私が飼うことになった。
カラスともご対面。
初めて目にする大きな黒い鳥に驚いている。
ミケはというと、今はもう我が子に対する想いはない。
声がかれるほど泣き叫び求めた我が子だったが、 その記憶すら薄れていくようだ。
2018年8月11日公開