カラス小屋の屋根にとまるハシボソのお父さん(右)。
視線の先にはやたら毛艶の良い一羽のカラスが・・・。
昨年から時々、我が家の庭に現れるハシブト君である。 なーんにも考えていなさそうなマヌケな表情をしているが、実際に何も考えていないのだろう。
お父さんは怒っているぞ!
「なんですかぁ?」とでも言いたそうな表情をしている。
ここはハシボソ夫婦の縄張りの中心地だ。しかもその縄張りの主に睨まれている状態である。 カラスの世界にも空気の読めないヤツはいるのだ。
その時、近くで待機していたハシボソのお母さんが鳴き声を上げた。
それを合図に夫婦でハシブト君を襲撃!
分かりにくい写真なので説明すると、写っている二羽はハシボソ夫婦で、ハシブト君はすでに地面に叩き落されている。
ハシボソ夫婦は追撃の手を緩めない。落下したハシブト君にさらなる追い込みをかけるのだ。
カラスの縄張りは面積で示されることが多いが、実は高度も関係した三次元の空間になっている。 縄張りの上空を侵犯したくらいではここまでの攻撃はしないが、 自分たちの生活圏=「木々の高さ」くらいのところが最も重要な防衛対象となるのだ。 つまり、今回のハシブト君の位置は絶対にダメ。
よく、はるか上空を飛行しているカラスを見かけるが、 あれは他のカラスの縄張りを侵犯しないように高度をとって移動しているのである。
さらに侵入者が・・・、
春の冷たい雨が降りしきる中、今度はタカがやって来た。 一見、オオタカに見えるが体のサイズが小さい。
これはオオタカではなくハイタカである。 オオタカにそっくりであるが体は小さく顔つきも異なる。 脚を見ると中指(第3趾)が異様に長いのが特徴である。
この時、近くの木にはハシボソのお母さんがとまっていたが、特に気にする様子はない。
縄張りのど真ん中での狩りを許しているが、以前のハシボソ夫婦なら即座に排除しただろう。 このハイタカはハシボソ夫婦から特に危険のない存在として認められているのか、最近は毎日のように庭に来るようになった。
おっと、窓から撮影している私に気が付いた。
正面から見ると意外に愛嬌のある顔をしている。
ハイタカの狙いはこれだ。 雨が降るなか地上でエサを探す一羽のキジバト。
ハイタカは個体によってそれぞれ獲物の好みが異なるようだが、ここに来るハイタカの狙いは専らキジバトである。 ヒヨドリなど他の鳥には目もくれず、ひたすらキジバトだけを狙っているのだ。
草の間に顔をつっこみ、何か種のようなものを拾い上げた。
ハイタカの存在には気づいていないようだ。
静かにチャンスをうかがっていたハイタカが、突然音もなく飛び掛かる。
だが、狩りはほとんど失敗に終わるのだ。 そんな時、逃げるキジバトを深追いすることはせず戻ってきて再び待ち伏せをする。 これを繰り返しているのだが、私が見ているところで狩りを成功させたことはない。 しかしこのやり方に拘っているところをみると、毎日どこかで狩りを成功させているのだろう。
夕方になり雨も上がった。
庭を見渡すと鳥の羽毛が大量に落ちているではないか。
これはキジバトの羽毛だな・・・。
10メートルくらい離れた別のところにも羽毛が散らばっていた。
よく見ると血痕もある。 さて、あのハイタカは狩りを成功させたのか? いや、この血の量から推測すると狩りは失敗したと思う。
キジバトは猫やタカなどさまざまな捕食者に命を狙われているが、その割に危機感もなく「のほほ~ん」とした様子で地面を歩いている。 まるでヤラれキャラのような存在に見えるのだが、そんな彼らにも防衛の手段があるのだ。
この大量に落ちている羽毛はタカにむしられたものではない。キジバトは外敵に襲われたときに、自らの羽毛を大量に脱毛させ煙幕のようにするのだ。そして外敵がそれに目を奪われた隙に逃げるのである。
カラスの縄張りで日々繰り広げられる鳥たちのせめぎあいであった。
2020年3月15日 公開