この三毛猫が我が家に来るようになって4ヵ月がたった。
初めて見た時に比べると、ずいぶん大きくなったようだ。
いつも朝食を食べに来るが、
夜は来ないので他所でもらっているのだろう。
この辺りでは野良猫が多く、
猫たちはそれぞれ、お気に入りの家でエサをもらって生きている。
いわゆる地域猫だ。
だが、この猫はまだ避妊手術をされていない。
この辺りには避妊手術をされた地域猫と野良猫が混在している。
さらには、外飼いの猫もいるため、
勝手に捕まえて避妊手術をするわけにはいかないのだ。
さて、周囲のオス猫たちはそろそろ発情期を迎えるが。
すると、太ったオス猫がやって来た。
さっきから、野太い発情した声を発していたのはコイツだ。
白い巨体は横綱の白鵬みたい。
そのまま「ハクホウ」という名前を付けてやった。
ハクホウは以前からミケに好意をよせている。
だがその想いは全く通じていない。
不愉快そうに立ち去るミケ。
後を追うハクホウ。
猫パンチで追い払うミケ。
想いが伝わらず困惑するハクホウ…。
まったく相手にされず立ち尽くす。
ハクホウは巨体に似合わず優しい男だ。
ゆえに猫の世界ではあまりモテない。
よく見ると左の耳がV字にカットされているが、
これは去勢された地域猫の印なのだ。
だからそもそも参加資格が無いのであった…。
それがまた切ない。
そして最近になって登場したのがこのオス猫。
この辺のボスである。
立派な体格に精悍な顔立ち。
なにより、些細な事には動じない屈強な精神の持ち主だ。
最近、私の車に小便をかけているのもコイツだ。
ここに来る目的はもちろんミケ。
そして、いつもボスと一緒に行動しているこのオス猫。
こいつはボスの友達、というか子分である。
いつもジャイアンとつるんでいるスネ夫のような存在だ。
そのまま「スネ夫」と呼ばせてもらおう。
今日は朝から猫が発情した声がする。
声のする方を見ると、
何と、ミケが色っぽい声を出してボスを誘っているではないか!
声の主はミケだったのだ。
とうとうミケが発情してしまった。
子分のスネ夫も一緒にいる。
こいつらはいつも一緒に行動しているが、
こういう場面ではどうするのだ?
スネ夫をチラッと見るミケ。
だが、やはり選んだのはボスの方だ。
当然である。猫の世界では強い奴ほどモテるのだ。
何とも言えない表情だ。
そう、ミケはもう子猫ではなかったのだ。
ボスがミケの上に乗りかかった。
私はこの瞬間、子猫をワラワラと引き連れてくるミケの姿が脳裏をよぎった。
だがこの私に、こいつらの自然の営みを止める資格はあるのか? かと言って、放置すれば子猫がワラワラと我が家の庭に。
「やめさせるんだ!」 そう思った。
だが、そう思ったのは私だけではなかったようだ。
音も無く近寄るスネ夫。
どうするというのだ? ボスを裏切るのか?
スネ夫は両耳を後ろに傾け、低く身構える。
それは攻撃の姿勢だ。
飛び掛かった!
不意打ちを喰らい、驚くボス。
このままミケを奪い去るのか?
そしてボスを裏切り、スネ夫とミケは愛の逃避行へ・・・。
と・・・、うまくいくはずは無く、怒り狂ったボスに追い回されるスネ夫であった。
こうして、ミケの貞操は守られた。
とりあえず今は、であるが・・・。
2018年2月3日公開