誰もいない秋の海、彼方に広がる水平線。
ここは遠州灘の海岸だ。
向こうの波間に点々と見える黒い物体・・・。
アザラシの群れ? そう思った人もいるだろうがあれは全て人間なのだ。
波を待つサーファーの群れであるが、改めて見ると何だか変な感じがする。
それにしても平日の昼からなぜあんなに大勢の人がいるのか分からないが、皆さんテレワークかな?
そういう私もさっきまでサーフィンをしていたのだが・・・。
誰もいない秋の海でのんびりサーフィンを、と期待していたが意外と混雑していたのだった。
サーフボードにはロングとショートという二種類があるが私のはセミロングだ。 波に合わせて板を替えるのが面倒なので中間サイズとした。 さらに自分の体格とこの海域の波質に合わせた特注品である。
若いころの私はサーフィンに熱中し、海を中心とした文化に心酔したものだ。そんな私のサーフィンだったが、今では単なる健康維持とストレス解消という目的に成り下がってしまった。 さらに最近では、海辺でカラスを観察するついでにサーフィンをしているようなものだ。
しばらくすると南東の風が強まり海が荒れてきた。 あっという間に波は大きくなったがコンディションは悪化した。
興味の無い人が見れば「晩秋の荒れた海に入って何が楽しいのか?」と思うだろう。
そして、それを見ている鳥たちは何を思うのか?
人間たちが集まって行水しているように見えるのかもしれない。
そうしていると一羽のカラスが浜に向かって飛んできた。
スイーっと目の前を横切り波打ち際へ。
立派な体格のハシブトガラスだ。
この海岸はハシボソガラスの縄張りだったのだが、
今年に入ってからハシブトに圧倒されている状態だ。
小さなカニや貝をとっているのだろう。
今は満潮だが潮が引くと多くのカラスが波打ち際に集まってくるのだ。
ところで、なぜ彼は海に向かって吠えているのか?
向こうの浜ではカラスたちが潮だまりに集まっている。
「海水を飲んでも問題ないのか?」
一見、海水に見えるがあれは淡水なのだ。
このあたりの海岸は小高い丘が連なり木々が生い茂っている。
そして、そこから地下水が流れ出ているのだ。
海の幸と豊かな森、そして飲み水もあるこの場所はカラスたちにとって住みやすい。 カラス本来の姿を観察できる場所なのだ。
2020年11月15日 公開