カラスブログ2020年3月8日 苦渋の決断

今年も鉄塔に巣作りを始めたハシボソ夫婦。しかし彼らを待ち受ける運命。
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「巣の撤去にあたり巣の中のヒナは殺処分しか認めない。」という県の方針について環境省に質問したところ、「それは法的根拠が無く適切ではない。」という回答を得た。これは朗報ではあるが、しかし、県の方針を撤回させるには時間が足りない。

こうなったら最後の手段を使うしかない。 産卵する前に巣を撤去するのだ。 そうすれば育てたヒナを殺処分されることもない。 考えてみれば、そもそもハシボソ夫婦にとって、我が子が殺処分になろうが誰かが保護しようが同じことなのだ。

カラス

さっそく電力会社に事情を説明し巣の撤去を依頼したところ、快く応じてくれた。


カラス

自らに迫りくる危機など知るはずもなく、ハシボソ夫婦は今日も巣作りに没頭している。

彼らが運んでくる巣作りの素材が柔軟性のあるものに変化した。 これは巣の骨格が出来上がり、内装の仕上げに入っていることを示している。 そしてそれが終ればいよいよ産卵だ。その前に巣の撤去を行うのだ・・・。


そして撤去の日

カラス

2月26日。ハシボソ夫婦が巣作りに励んでいたところに突如登場したのは電力会社の社員さん。 いよいよ巣の撤去が始まるのだ。


「許せ、ハシボソ夫婦よ。」

今、巣が撤去されているところだが、意外にもハシボソ夫婦は姿を見せない。この異変を遠くから眺めているのだろう。 巣の中にヒナがいないこの時期はまだ攻撃性が低いのだ。

カラス

そして巣の撤去作業も終ろうとするころ、ハシボソのお父さんが鉄塔の下にやって来た。

鳴き声を上げてはいるが威嚇するようなものではない。 おそらく何が起こったのか理解できていないのだろう。


カラス

巣を撤去された後も、ハシボソ夫婦はすぐに現場を見に来ることはなかった。


カラス

すると、西の方角から別のハシボソが登場。すぐにケンカが始まった。 カラス同士は隣接する他のカラスの縄張りを常に意識している。 巣を撤去されたハシボソ夫婦の姿には、それなりの動揺や落胆が現れたのだろう。そして他のカラスはそれを弱体化と捉え勢力拡大を狙ってきたのだ。


カラス

隣のカラスとのケンカが収まったころ、ようやくハシボソのお母さんが様子を見に来た。 どういう心境なのかは想像するしかないが、 悔しさや怒りの感情だろうか? いや、それとは違うように見える。突然の出来事に状況を理解できず困惑している様子だ。


もしかして、「巣の撤去は私が仕組んだことだとバレていないか?」と、頭をよぎる。 もちろんカラスにそんな想像力があるわけはない。

カラス

翌日には普段通りにエサ台に来るようになった。 ハシボソ夫婦に対する後ろめたさがそのような心境にさせるのだ。


そして・・・、

カラス

次の日から、ハシボソ夫婦は再び同じ場所に巣を作り始めた。 巣の撤去に懲りて別の場所に変更することを期待していたが・・・。


カラス

しかし巣を撤去されたことを非常に気にしているようで、巣の設置場所を決めかねている。 三か所も枝の設置が見られるが、彼らなりに「俺たちの巣はなぜ撤去されたのか?」と、考えてはいるようだ。だが、その理由までは分かるはずもない。

この状況では巣を撤去した意味がないのでは? と思うかもしれないが、もちろんこうなることは計算済みである。 彼らが再び巣を作り始めたとしても、巣が完成する前のタイミングで工事が始まるのだ。そして彼らは二度も巣を撤去されることになるのだが、それは仕方がない。ヒナの殺処分という最悪な結末を回避できればそれもやむなしだ。


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2020年3月8日 公開

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