カラスの好物と聞いて何を思い浮かべるだろうか?
街で生ゴミを漁るカラス・・・。 動物の死体に群がるカラス・・・。
好き嫌い無く何でも食べているように見えるかもしれないが、 そんなカラスたちにも食べ物の好みははっきりしている。
このコーナーではカラスが好む食べ物について食材別に解説しよう。
カラスが好む魚の種類はフグやハモなどのあっさりした白身よりも、 ブリ、サバ、アジ、イワシなどの脂ののったものを好む。 だがこれらの魚は傷むのが速い。 臭いが出るほど傷んだものは好んで食べることはない。 また、シメサバや昆布ジメなどの加工した魚は食べない。
← 脂ののった冬のブリ。
この魚は寝かせるよりも新鮮な方が旨いが、
それはカラスにとっても同じこと。
新鮮なものを用意する。
鮮度が良く、脂が適度にのった刺身。 旨そうな切り身を見て唾をのむ。
カラスは視力が抜群に良い。 刺身の色、艶から鮮度を見極め、脂の具合も見極める。 熟練の魚屋に匹敵する目利きである。
動物の肉はカラスが最も好む食材だ。 だが意外にもイノシシなどのジビエよりも、 人間によって品種改良された豚や牛の方が好きなのだ。
肉の鮮度には拘りがあるようだ。 動物の死体にカラスが群がっている姿をよく目にするが、 そこでも鮮度が重要で、あまりに腐敗が進んだ肉は食べない。 海岸沿いに打ち上げられた動物の死体の前にカラスが佇み、 食べようかどうしようか悩んでいる姿をよく見る。
← これは和牛のランプという部位で、 適度に脂がのった美味しい部位だ。 カラスはこのように脂を含む部位を好む。
鮮度は重要であり、食通が好む熟成肉はダメ。
肉を少し温めて脂を溶かしてから与える。
和牛を口にすると、数秒黙る。
そして舌で味わいながら飲み込むのだ。
脂身はハシブトガラスの好物だと思われているが、 ハシボソガラスも同じように和牛を好んで食べる。 観察した限りではハシボソガラスとハシブトガラスの間に好みの差は無い。
↑ これは、この野生のハシボソガラスが初めて和牛を食べた瞬間を捉えた貴重な写真である。
彼は初めて食べる和牛の味に衝撃を受け、眼を見開き硬直した。 そして、この姿勢のまま数秒が経過した。 その後、さらに一度口に入れたものを出し何度も味わっていた。
この時、彼は子育て中だったが、 和牛を巣には持っていかず全部自分で食べてしまった。 野良として、いや、 野生として暮らしてきた彼にとって本来は一生、 口にすることの無い高級食材である。
卵はカラスの大好物だ。 カラスがハトの巣を襲って卵を奪い、中身を食べる光景をよく目にする。 栄養価が高くしかも美味だからだ。 卵黄を原料とした食品も好んで食べる。 マヨネーズやカスタードクリームなどだ。
卵を半熟にゆでて、卵黄だけ与えると喜んで食べる。 カラスの好物ベスト3には入るだろう。
だが卵白はあまり好きではない。
ハシボソガラスも同様。
口いっぱいに卵黄を詰め込む野生のハシボソガラス。
鶏肉も好んで食べるが、 鶏肉の味が好きというよりも骨付き肉を好むと言った方が適切だ。 ものすごい集中力で手羽元や手羽先などを解体する。 「死肉の解体」、というカラスの本能を呼び起こすのだろう。
手羽元を与えると喜ぶ。 骨から肉や軟骨を器用に引きはがす。
長時間かけて、しつこく手羽元をしゃぶり尽す。 軟骨はもとより、骨の柔らかい部分を割って髄までしゃぶるのだ。
カラスは乳製品も好んで食べる。 そのなかでも卵黄を使用したカスタードクリームは大好物だ。
大好物を前に唾をのむカラス。
カスタードは安物ではなく、 手作りの高級品を好む傾向がある。 彼らには歯が無いので虫歯の心配は要らないが、 こういった砂糖や牛乳など栄養が偏ったものは頻繁に与えない方が良い。 さらに注意したいのは、チョコレートを含むものはカラスにとって毒性を示すので、 エクレアやチョコクリームは与えてはいけない。
ドッグフードはカラスにとって総合栄養食だ。 味はともかく、栄養バランスは間違いない。 カラスのエサに悩んだら、とりあえずコレ。
それに加えて九官鳥の餌でも与えておけば、 栄養に過不足は生じないはずだ。
ドッグフードを与えるとこうして自ら水に浸し、 柔らかくなるのを待ってから食べる。
だが実はドッグフードはあまり好きではないのだ。 これは犬よりも味覚が鋭い証拠でもある。 カラスの味覚は犬や猫よりも、人間と共通する部分が多い。
カラスとペットフード ←各ペットフードを検証したブログ
出汁を取った後の煮干し。
一応、食べるがあまり好きではない。
非常食のようなものだ。
直ぐに食べずに小屋の隅に隠し置くことが多い。
煮干しを食べた後で和牛を目の前に出すと、
飲み込んでいた煮干しを吐き戻し和牛に食らいつく。
ここまでに紹介した以外にも多くの食材を好む。 例を挙げると豆腐などの大豆加工食品や、 ブドウなどの甘い果実を好む。
生ごみでも喜んで食べるカラスには嫌いなものなどないだろう、 と思われがちだがそうでもない、 人間の好物だがカラスにとっては苦手な意外な食品はこれだ。
魚の昆布ジメ、熟成した和牛、リンゴ、キウイフルーツ、鮮度の悪い肉類全般
カラスは意外にも熟成が進んだ肉は好まないのだ。 もちろん腹が減ったら食べるだろうが、 これらのものは好んで食べることは無い。 カラスが動物の死体を食べているのを見かけるが、 あれは腐乱死体ではなく、比較的新鮮な死体である。
カラスは雑食性なので他の鳥と比べると食材の許容範囲は広い。 だが、鳥類に共通して強い毒性を示す食品があるので注意が必要だ。
チョコレートは循環器や中枢神経に影響し不整脈や呼吸不全、 痙攣などの症状が出て少量でも致死量に達する危険がある。
アボカドは品種によっては強い毒性を示し鳥を死に至らしめる。 カラスに対する致死量は不明だが少量でも避けるべきである。
ここまで紹介してきたように、カラスの味覚は非常に鋭い。 それは街で生ごみを漁っているカラスを見ても分かる。 一見、生ゴミを無分別に漁っているように見えるが、 自分の好みの食材を厳選しているのだ。 その結果、ゴミは散乱し現場は非常に散らかるのである。
カラスは他の動物と比べると嗅覚が弱く、 それを味覚で補っていると考えられる。 犬や猫のように鼻で確かめるのではなく、 食べられるかどうかを鋭い味覚で確かめているのだ。 そして一度食べたものを学習し、 次からは眼で判断するようになる。
様々なものを食べるほどにレパートリーは広がり、 好き嫌いもはっきりしてくる。
一般的にハシブトガラスは動物食志向で、 ハシボソガラスは植物食志向と言われるが、 それは単なるイメージであり、実際はそのような食性の違いは無い。 それぞれが住んでいる土地の食べ物が異なり、 その土地の味に慣れているだけのことである。
つまりカラスの味覚は主に後天的な学習により形成され、 親子や仲間内で食性が共有されるのだ。 そして地域によって好みに差が生じるのである。 これがハシボソガラスとハシブトガラスの食性が「異なるように見える」理由である。
関連ブログは こちら
2018年5月22日 リンクを追加 カラスとペットフード
2017年8月13日 改訂版を公開 改定前は こちら
2016年12月3日 公開