我が家の庭を縄張りにしているのは、 ハシボソ夫婦以外にこのルリタテハだ。
3月5日のブログに登場したルリタテハと同じ個体だと思う。
他の蝶がまだ冬眠中の早春一番に活動を開始。 毎日こうして縄張りを守っている。 近づくライバルを蹴散らし、メスを待っているのだ。
どうやらまだ、お相手にめぐり会えていないのだろう。 焦りがうかがえる。
羽はボロボロになり歴戦の傷跡が残る。
「この命尽きるまで望みは捨てん!」、という心意気だと思うが、 それよりもこいつは冬眠から覚めるのが速すぎたと思う。
とにかく、がんばってくれ。
その横でムクドリは巣作りの材料集め。
そしてハシボソ夫婦の巣。 巣の中に二羽のヒナが確認できる。
子育ては順調のようだ。 お父さんにエサをねだっている。 孵化から二週間が経ち、ヒナは黒い羽毛で覆われ、 一応、カラスのシルエットにはなった。
だが巣立ちまであと10日間以上はかかるだろう。
そして、こちらはバン君。
朝から上機嫌で、大音量で鳴いている。
今は、ハシボソガラスの声をまねて、ガラガラ声で絶叫している。
このカラスの特技は、いくつもの声色を使い分けられることだ。
声真似のレパートリーは、ハシボソガラスのガラガラ声、 カエルの「ゲロゲロゲロ」という連続音、 そして犬の声である。 自分が気に入った動物の声を学習し、習得したのだろう。
今度は森の方でハシブトガラスの声がしている。
野外のハシブトガラスは最も気になる相手だ。
バン君は人間に保護される前、親鳥と過ごす期間が長かったのだろう。 親鳥からハシブトガラス本来の鳴き声や、 カラスとしての基本姿勢を学んでいるのだ。 だからバン君は人間よりもカラスの方が好きだ。 そしてハシブトガラスの声には特に敏感に反応する。 生き別れた親や兄弟たちへの想いもあるのかもしれない。
声のする方向に大音量で絶叫する。
ハシブトガラスの友達を作りたいのだろう。
だが、呼べど叫べど相手は振り向いてくれない。
なぜなら、あの森の端からこちらは ハシボソ夫婦の縄張りで、ハシブトガラスたちはこちらに近づけないのだ。
ハシブトガラスを相手にするときの声は、 ハシボソガラスの声真似ではなく、 ふざけてカエルや犬の声を発っするでもなく、 本来の「カァッー!、カァッー!」と、澄んだ声だ。
今度はこっち側にも。
バン君は私の呼び掛けには全く応えず、野のハシブトガラスたちに声を送っている。
その間、アディはというと・・・、
私の臭いサンダルに顔をつっこんでジャレている。 こいつはカラスよりも人間が好きなのだ。
親鳥から、カラスとしてのプライドを何も教わっていない様子だ。
サンダルに全力で噛みつき、引っ張るのがこいつの最近の楽しみ。
サンダルが壊れるまでやるので、 私のサンダルは消耗品である。
ところで、このカラスは陽気な割に無口である。 滅多に鳴かないのだ。
鳴くとしても「アブー、アブー」というようなヒナの声や、 たまに「グワァー、グワァー、」という何となくカラスっぽい声で鳴くだけである。
幼鳥の頃に保護されたため、親鳥からの学習期間が短かったのだろう。 さらに狭い部屋で飼われたことで、 大きな声を発して相手と交信する必要が無かったのだろう。 それにより音痴のまま成鳥になったと考えられる。
この対照的な二羽のハシブトガラスが示すもの。 それはカラスの発声の大部分は後天的な学習により習得するということだ。 これはカラスに限ったことではない。 カラスが属する鳴禽類(めいきんるい=スズメ亜目)に多く見られる特徴でもあるが、 その中でもハシブトガラスは大きな可能性を秘めていると思う。
ではハシボソガラスは?
似たような鳥ではあるが、 ハシボソガラスはあの一定のガラガラ声だけである。 おそらく発声のメカニズムがハシブトガラスとは異なり、 デフォルト設定でガラガラ声のフィルターが掛かってしまうのだろう。
2017年5月21日公開