これは11月22日の定点カメラの画像。
ハシボソの子ガラスが一羽でエサ台に来ているが、
エサ台にはすでに何も無い。
だが余程腹を空かせているのか、
板の上に僅かに残るエサの破片を一生懸命に拾っている。
そして、これがこの子ガラスを捉えた最後の姿となった。
12月11日
ハシボソの夫婦が一緒に食事をしているが、
そこに子ガラスの姿は無い。
ついに子ガラスは独立したのか?
秋までは昆虫や果実が豊富だったからよいが、
これから一羽で生きていくのは大変だろう。
12月上旬まではカマキリなどの昆虫が産卵のためにウロウロしている。
カマキリはカラスの大好物だ。
それまでは何とか獲物にありつける季節であったが…。
そして真冬
木の葉もすっかり落ちて季節は真冬へと移った。
11月の下旬から、虫たちの鳴き声が次第に少なくなり、
ついには沈黙する。
あんなに騒々しかった虫たちの声が今は懐かしい。
エサとなる昆虫はもういない。秋に実った木の実もすでに無く、
カラスたちにとっては厳しい季節である。
特に初めての冬を迎える子ガラスは、冬季における獲物の取り方を知らないのだ。
真冬の間、森のカラスたちはいったい何を食べているのか? 私は森の中にカラスが食べそうなものがないか探してみたが、 ほとんど見つからない。 そこにあるのは、わずかな木の実や越冬前のテントウ虫などだ。
カラスたちはおそらく、動物の死体などを見つけて食いつないでいるのだろう。
12月15日
森のハシブトガラスたちが獲物を求めて池の周囲に侵出してきた。
カラスたちは食糧難の季節になると、いつも縄張り争いを始める。
だがそれは人類が戦争を始める理由と同じ。争いは生物にとって必然である。
ハシブト4羽に対して劣勢になったハシボソ夫婦は、ついに防衛線を下げ、
池の対岸まで退いてしまった。
それでも縄張りを取り戻すために時々、森の方に攻撃を仕掛けに行く。
そこから一進一退の攻防が繰り返されているが、
ハシボソ夫婦は長年連れ添ったゆえのコンビネーションを活かし、
数で劣るにもかかわらず健闘している。
エサ台に放置された卵黄が干からびていく。
争いが始まって以来、ハシボソ夫婦はエサ台には全く来なくなったのだ。
腹は空かしているはずだが、どうして来ないのか?
おそらく敵にエサ台の存在を知られたくないのだろう。
12月24日
ついにバレてしまった。
一羽のハシブトガラスがエサ台にやって来た。
初めて庭に降り立ったこのカラスは、
敵陣にあるこの不自然なエサ台を警戒している様子だ。
そして何も取らずに飛び去った。
不自然な状況から何か感じ取ったのだろう。
ということは、森のハシブトたちは今まで、
ハシボソ夫婦がここでエサを食べていることを知らなかったのだろうか?
だとすると、
ハシボソ夫婦は他のカラスに見られないように注意していたのかもしれない。
だが翌日、同じカラスが再びやって来た。
そして卵黄だけ取って飛び去って行った。
どうやらこいつも卵黄が好物のようだ。
そして、ハシボソ夫婦がエサ台に来なくなって二週間が経った。 今日も対岸で争いを繰り広げていたが、その間にも徐々にエサ台を侵略されようとしている。
そうなると私は困るのだ。
ハシボソ夫婦が心配? それもあるが、カラスの観察において同一の個体を追跡調査できる環境は貴重なのだ。 そのために毎朝エサを与えて、我が家に誘致していたのだ。 それを、よく分からないハシブトガラスの群れに占拠されては意味が無いのである。 なんとかハシボソ夫婦には戻ってきてもらいたい。
2017年12月31日公開