こちらはハシボソガラスのお父さん。
先程から、カラス小屋に熱い視線を送っている。
視線の先はこれ。
アディがくわえているハンバーグだ。
今日の朝食はハンバーグだが、すぐに食べずに見せびらかしている。
アディが窓枠にハンバーグを置いたのを見て、「ズバッ」と飛び立つ。
「そのハンバーグはもらった!」
すかさずハンバーグを避難させるアディ。
悔しがるお父さん。
そして再び、窓際にハンバーグを置く。
冷静を装うお父さん。
「なんか俺、遊ばれている気がする・・・。」
これ見よがしにギリギリの位置にハンバーグを置き、 お父さんを挑発する。
窓枠に置かれたハンバーグに狙いを定め・・・、
「奪い取るのだ!」
とっさにハンバーグを避難させるアディ。
これはもう、完全に遊びでやっている。
ハシボソのお父さんをからかっているのだ。
さっきまで冷静を装っていたお父さん。
ついにキレた。
アディに向かって吠えまくっている。
「ここまでおちょくられては、カラスとしてのプライドが許さんのです。」
アディについて回り、吠える。
もし今、扉が開いたとするとアディはお父さんにボコボコにされることでしょう。
態度を軟化させるアディ。
お父さんの前にハンバーグを差し出す。
お父さん:
「そうだよアディ、それでよいのだよ。」
「さあ、それをこちらに渡しなさい。」
「さっきは吠えたりして悪かったな。」
アディは静かにハンバーグを置いた。
そしてそれを二つに分けた。
小さい方のハンバーグを分けてもらったお父さん。
だが大きい方のハンバーグはアディのもの。
のど袋にハンバーグを貯めたお父さん。
さっそく子ガラスに持っていくのだろう。
ところで我が家のアディはハシブトガラスで、 このお父さんはハシボソガラスだ。
両者は同じ地域に住み、同じ姿、似たような食性である。 きっと遺伝子も極めて近いのか? と、思うかもしれないが、 分岐分類学上は遠い昔に種分化し、別々に進化した種なのだ。 だからハシブトガラスとハシボソガラスの間に雑種は成立しないし、 むしろ都会で住処を同じくした両者はライバル関係にある。
別種の鳥なのにコミュニケーションが取れているのが不思議だが、 後天的に発達した頭脳がコミュニケーション能力を高め、 本能を超えて異種間交流を可能にしている、と、私は思う。
2017年5月13日公開