3月16日
朝早くからピッタリと体をよせ合い仲よさげなハシボソ夫婦がいた。
(左が妻で右が夫)
長年、このカラス夫婦を観察してきたが、
こんなに仲の良い二羽を見たのは初めてだ。
そこらでよく見るカラス同士の羽繕いも、この夫婦の間ではほとんど見られない非常に珍しい光景である。
おそらく交尾も近いのだろう。
さて、あれから巣作りはどうなったのか?
さかのぼること三週間前
2月27日
完成間近の巣を撤去されたハシボソ夫婦だったが、
懲りずに同じ場所に巣作りを開始したのであった。
(前回のブログ) ←
だが、さすがに前回と同じ位置ではまずいと思ったのか、何ヵ所か材料を仮置きして慎重に確かめていた。 しかしそういう細かい部分が問題なのではなく、この鉄塔自体がダメだということには気が付かなかったのだ。
結局、最上段のアームの部分に巣を設置することに決めた。
場所が決まればあとは早い。 急ピッチで工事を進め、3月16日には内装の仕上げに取り掛かっていた。 今回は巣の撤去から再び巣作りを始める様子を観察してきたが、 おかげでカラスの巣は20日間もかからずに完成するということが理解できた。 しかし急いで仕上げたのか、再建した巣はちょっと雑なように見える。
あとは完成した巣に卵を産み落とすだけ、といったところだ。
だが、いくら頑張っても今年はこの鉄塔で子育てをすることはできない。
そして・・・
その日の昼に鉄塔を見ると、黒い網袋のような物体が取り付けられていた。
いよいよ工事が始まる。
電力会社から聞いていた予定の通りだ。
ハシボソ夫婦の巣の間近にもワイヤーが取り付けられている。
すると、何人もの作業員が一斉に登ってきた。
作業員たちはそのまま網袋に乗り送電線を移動していく。
何の作業をしているのか分からないが、まるで「忍者部隊」のようだ。
「忍者」たちは仕事を終えて撤収していく。
突然の襲来だったが巣は無事に残されていた。
安堵した様子のハシボソ夫婦だが・・・。
彼らにとって本当の脅威はこれからである
翌日、今度は電力会社の社員さんが登ってきた。そして「ヨイショ」という感じで巣を持ち上げ、あっさりと撤去・・・。
ハシボソ夫婦はその様子を近くの電柱から見ていた。
彼らにとって、まさに三週間前に見た悪夢の再来だろう。
巣のあった場所を見つめ呆然と立ちつくすハシボソ夫婦。
かなりショックを受けているようだが、立ち直れるのか?
だが野生の動物はメンタルが強い。気を落とすことなく普段通りに生活しているように見える。
人間が同じ目にあったらどうだろう? 新築を二度も破壊されたとしたら? 二度目には心が折れ、酒におぼれ飲んだくれ、あるいは引きこもってウツになるかもしれない。
さて、今年のハシボソ夫婦の子育てはいったいどうなってしまうのか。 彼らにとって、予想もしなかったまさに受難の春である。
2020年3月23日 公開