カラスは昼行性の動物であるため夜は寝ている。 だけど、警戒心の強いカラスたちは寝姿を人間に見せることはない。 それではいったい、カラスはどのように寝ているのだろうか?
前回の「日没後のカラス」に続いて今回は深夜のカラスを観察してみよう。
この日は満月だ。
周囲はほんのりと月明りに照らされ、風もなく静かな夜。
カラス小屋の内部には赤外線カメラが設置してある。
小屋の中は真っ暗にみえるが、実は今も赤外線ライトで照らされた状態なのである。
この状態を赤外線カメラで撮影すると、下の写真のように見える。
↓ ↓
このように、赤外線ライトによって室内は煌々と照らされているのだ。
だが、人間と同様にカラスも赤外線は全く見えないので、 カラスの安眠を妨げるものではない。 ちなみに、赤外線を感知できる動物はごく少数である。
赤外線カメラとは、
通常のカメラには赤外線をカットするフィルターが組み込まれているが、
これを除去し逆に可視光をカットするフィルターを取り付けたものが赤外線カメラである。
主に、夜間に人や動物に気付かれず撮影するのに使用するものである。
赤外線ライトまたはフラッシュとセットで使用する。
元々は暗視スコープなど軍事用のものだったが、
現在では夜間の監視カメラとして一般に広く普及している。
尚、ここでいう赤外線カメラは近赤外領域の波長を写すカメラのことであり、
サーモグラフィーではない。
小屋の中の様子を見てみよう。
日没後、 暗くなるとまずはアディがホームポジションに戻ってきた。
小屋の隅に取り付けた枝がカラスたちの寝床である。
続いてバン君も。
眼の部分が白く見えるが、 これは眼が赤外線に反射したものである。
寝床についてもしばらくは目を開けて辺りをキョロキョロしている。
すぐに寝るわけではないようだ。
やがて目を閉じ、縮めた首を後ろに回す。
これがまさに、
「カラスの寝姿」である。
よく見ると片足を上げている。
カラスの足は木の枝にとまった時に最も安定するようにできているので、 片足でも十分ということだろう。
そのとき、小屋の前では狸が徘徊している。
彼らは夜間に活動することが多い。
このように地面に鼻を近づけて食べ物を探すのだ。
この辺りに出没するのは狸だけではない。アライグマやイタチも生息している。
それらに比べると狸はおとなしい動物であり、害も少ない。
狸といえば古くから物語や伝説にも登場し、 日本人にとって身近な動物だ。 現在ではなぜか蕎麦屋の前に銅像まで建っている。
そんな身近な動物なのに、特に愛されているわけでもない不思議な存在である。
話が逸れたが、カラスたちの観察を続けよう。
バン君が目を覚ました。
カラスの眠りはほとんどが浅いレム睡眠のようだ。 少しの物音や動物の気配に反応して目を開ける。
レム睡眠中は夢を見ることもあるため、カラスの寝言が聞こえてくることもあるのだ。
続いてアディも目を覚ました。
隣のカラスが起きるとそれに連動して目を覚ますようだ。
いつ観察しても、寝るときは常に互いに距離をとっている。 密着して寝ることはないようだ。
鳥類の睡眠
一般的に天敵の多い動物ほど眠りは浅く短いものになる。
鳥類も例外ではなく睡眠時間こそ長いものの、その眠りは浅くレム睡眠を繰り返している。
鳥類の中には脳を左右半分ずつ交互に休止し、活動しながら睡眠できる種も存在する。
その場合は片目を閉じていることが多い。
深夜0時。
アディが突然、謎の運動を始めた。
両翼を大きく上に広げバンザイのポーズだ。
続いて右足を上げる。
そして左足も。
まるで土俵に上がった力士のようだ。
おそらく目覚めた後のストレッチだろう。
こうして一晩を通して寝たり起きたりを繰り返していた。
夜明け前
東の空がわずかに白みはじめるころ、ハシボソガラスがエサ台にやって来た。
そう、カラスは早起きなのだ。
そして辺りが明るくなり始めるころ、 我が家のカラスたちも遅れて活動を始める。
野生のカラスよりも起床が遅いのは、 自力で採餌する必要もなく漫然とした生活を続けたからだろう。
二週間にわたり深夜のカラスを観察してきた。
その結果、カラスの眠りはレム睡眠を繰り返し、深い眠りではないことが分かった。 そして意外なことに、 月夜の晩など比較的明るい夜には何度も枝を移動しているのである。
次回、更新の際は野生のカラスの睡眠について観察する予定。
*更新時期は未定
2018年7月29日公開