絶妙な曲線を描くこのエサ台。
作った当時は自画自賛したものだ。
しかし、複雑な形の枝はバネのように上下し、エサが飛び跳ねるという弱点が露呈したのだった。 その後はカラスに壊されるなど、散々な結果であった。
しかも制作から一年も経たないのに劣化が著しく、このままだと今年の台風で崩壊するだろう。 そこで今回はエサ台を作り替えることにした。
なんだか結局、毎年エサ台を作り替えているような気がする・・・。
まずはこの、「ビヨヨ~ん」と上下に飛び跳ねるのを何とかしたい。 そこで次回作は強度を最優先に考えよう。 しかし地面に足が着かない設計で強度を優先させると、そうとうゴツイものになるのだ。
そう、こうなるのである・・・。
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まるで宇宙ステーションから伸びるロボットアームのようだ。 あえてレトロな小屋と幾何学的なエサ台の融合を狙ったつもりだが、 「これじゃない」という違和感が漂う。
宇宙人が付けていったかのような不自然さだ。
なぜこうなったか振りかえってみよう。
今回のエサ台は強度を最優先にするという目的があった。 だから天然木ではなく角材を採用したのだ。 しかし角材を小屋に取り付けると調和が乱れる。 だからあえて奇抜な形にして不調和の芸術を狙ったのだ。
まずはエサを入れる部分の製作だ。
角度を32度に設定して木材を切る。
これを5個用意する。
切り口を合わせれば五角形の出来上がりだ。
最大5羽の家族が向かい合って食事ができるように考えた。
五角形のエサ台を支えるフレームにはこの太い木材を使う。
フレームを仮組し、水準器を使い水平を出す。
ホームセンターにちょうど良い金網が売っていたので、それを付けた。
エサを置く部分は金網にするのがベストだ。
この方が清潔。
そして頑丈なフレームに取り付けた。
目指すところは幾何学的なエサ台とレトロな小屋との融合であり、不調和を楽しむものだ。だからこんな自然な色ではダメ。インパクトが足りない。
白に塗ってやった。
「完成!」
「 ・・・。 」
表現しようにも言葉が見つからない。
「宇宙人の忘れ物」というところか。
1時間もしないうちに作り替えを決意。
さっそく屋根から取り外した。 ハシボソ夫婦を招くために置いた和牛がむなしい。
もう17時だ。明日の朝のエサやりに間に合わせないと。
私は懸命に考えた。
そして15分後・・・。
庭にあったサカキの枝を現物合わせで適当にカットしエサ台を取り付けた。
「なんだ、意外といいじゃないか!」
多少の違和感はあるものの、強度は充分で見た目も悪くはない。
何時間もかけた作品よりも拾ってきた枝で適当に作った方が勝るとは・・・。
物事は計算通りにいかないものだ。
さっそくハシボソ夫婦に見てもらおう。
やって来たのはハシボソのお母さんだ。
毎度のことだがものすごく警戒している。
エサ台には好物の和牛が置いてあるのだが、何度も見ては後ろに下がることを繰り返している。 ところでお父さんは近くにいないようだが、おそらく遠くから様子を見ているはずだ。
疑いの視線をエサ台に注ぎ込む。
考えあぐね、頭をふくらます。
こうして数十分が経過した。
「行った!」
しかしエサ台の支柱で足を滑らせ転びそうになり、バタバタしている。 サカキの枝は滑りやすいから止まり木には不向きなのだ。
余談だが、野生動物がドジをするシーンはあまり見かけないものだ。 しかし今年の2月に私は見た。屋根の凍った部分に降りてきたハシボソのお父さんが、豪快にころぶところを。
気を取り直し、至近距離からエサ台を覗き込む。
不審な点がないか入念にチェックしているようだ。
そしてじっくり考える。
ようやくクチバシを伸ばした。
エサ台から持ってきた和牛をクチバシで突いたり広げたりしている。
肉に何か不自然な点がないか確認しているのだ。
何がそんなに疑わしいのか知らないが、いつも以上に慎重だ。
様々な角度から肉を観察している。
「検品完了!」
ようやく合格のようだ。
結局この日、お父さんは来なかった。
そして次の日。
自分の妻に安全確認をさせたところで、ようやく登場だ。
もしかして「あの肉を食べた妻が腹痛にならないか」というところまで確かめていたりして?
2020年5月24日公開