この数日、子ガラスはまったく姿を見せなかった。 採餌を覚えた子ガラスは、森で獲物をとったりして過ごしていたのだろう。 この季節の森の中は虫だらけ。食べ物は豊富である。
7月8日。
久しぶりに姿を見せた子ガラス。 体格も少し大きくなったように見える。
遠くから観察している私に気が付き、こちらに視線を向ける。
その表情はまだあどけない子ガラスだ。
エサ台にはお父さんが先に来て、ドッグフードを食べている。
「遊んでいるうちに先を越された!」
ちょっと来るのが遅かったか。 エサ台のドッグフードはあまり残っていない。
どうやら、この親子はライバルの関係になりつつあるようだ。
ドッグフードを食べそこねた子ガラス。
大きな口を開けてお父さんに食べ物をねだっている。
都合の良い時だけヒナに戻るのだ。
子ガラスは鳴き声が少し大きくなった。
以前の「ビャー、ビャー」という小さな鳴き声から、 「ギャー、ギャー」というハシボソガラス独特の声に変化するところだ。
その金切り声に押され後ずさりするお父さん。
もう、「愛しい我が子」という感情は無いのだろう。
子ガラスは土俵際にお父さんを追い詰めた。
困惑するお父さん。
急成長した我が子にどのように接していいのか迷っているようだ。
子ガラス:「ごはーん! のど袋に隠したの見てたぞー!」
お父さん:「グヌー、もうオレ、子育てやめたい…。」
土俵際で容赦なく迫る子ガラス。お父さんはたまらず降参。
今年は兄弟が早くに脱落し、両親の愛情を独り占めした子ガラス。
ずいぶんワガママに育ったものである。
お父さんは逃げ出すも、場外戦へと続くのであった。
子ガラスは成長すると、やがて親鳥に縄張りを追われ独り立ちする。 だがそれは、親鳥が「子の成長を願って心を鬼にする」というような美談ではない。 成長し、生意気になった我が子の姿に腹が立ち愛情が失せ、 次第に邪魔に感じるようになるのだ。
2018年7月15日公開