7月の縄張り争いを無事に乗り切り、 すっかり気がゆるんだハシボソガラスの家族。 漫然と夏を過ごしていた。
この画像は8月上旬に撮影したもの。 右が子ガラスで左がお母さん。
すでに巣立ちから2ヶ月が経ち、
ようやく自分で食事ができるようになった。
子ガラスがエサ台に向かって歩いていく。
小屋の中の様子をじっくり見ている。
これは親から教わった慎重さだ。
それを忠実に守り、非常に警戒心の強いカラスになっていた。
そう、警戒心こそが長生きの秘訣なのだ。
右にいるお父さんと向かい合わせでエサ台にとまっているが、
もう口を開けてねだることは無い。
自分で食べるようになったのだ。
だが、ハシボソたちの観察記録はここで途絶えることとなる。 この日以降、あまりエサ台に来なくなってしまったのだ。 本来、カラスは夏場は活動的ではなく、 真夏の日中は木陰でジッとしていることが多い。 意外にも暑さに弱いのだ。 さらに夏場はセミやバッタなどの昆虫が豊富なため獲物に困ることは無く、 狩の時間も短くて済むのだ。 子育ても一段落し、縄張りの警戒活動も緩む季節である。
だがしかし・・・、
ハシボソの家族が来なくなった理由は他にあった。 私は目撃したのだ。 近所の野良猫と一緒にキャットフードを食べるハシボソガラスの姿を・・・。
聞くところによると、近所の婆さんが野良猫にエサをやっているらしく、 しかもその量が尋常ではないようだ。 その婆さんはカラスと相性が良いようで、カラスからも警戒されていない。 それに気を良くした婆さんは、カラスにも積極的にエサをやっているようだ。 そして、最初はささやかだった餌やりは徐々にエスカレートし、 最近ではキャットフードでは飽き足らず、様々な食材や残飯を食わせているとのこと。 先日は路上にイカの内臓が置いてあるのを見た。 「なぜ道路にイカの内臓が落ちているのか?」と疑問に思ったが、 その婆さんの仕業だったのだ。
何だかまるで、カラスの好物を調べているかのようだ。
「はて?、それはどこかで聞いたような話でもある・・・、」
カラスが来なくなった我が家の庭。
だが、夕方に置いたエサが早朝には無くなっている。
姿は見ないが、どうやらカラスは来ているようだ。
そこで防犯カメラを設置して様子を見ることにした。
至近距離から狙う。
~ そして待つこと2日間 ~
8月25日
エサ台に来たのはハシボソの子供だ。
あの兄弟の内どちらかだ。
画質は悪いが動画と音声と静止画が同時に撮れる。
親鳥の姿が写っていないが、
両親は例の婆さんからエサをもらっているのだろう。
すると手前の蜘蛛の巣を蹴散らしながらもう一羽が登場。
もう1羽の兄弟かな?
あれ?
このシルエットはハシブトガラスではないか!?
奥のはハシボソの子供で間違いないが、
いったいどういうことだ?
口の中が真っ赤で、まだ子供だ。
大きさはハシボソよりも少し大きい。
ハシボソと仲が良さそうだったが、
どうやら知らない内に友達になったようだ。
子ガラス同士は友達になるのが速い。
人間の子供と同じだ。
~ その翌日 ~
この日はハシボソの兄弟が一緒にエサ台に来た。
仲良く向い合って食事中のように見える。
おそらく右が末っ子だ。
食べ方がぎこちなく、時々甘えた声を発している。
その甘ったれ具合に兄が突然キレた。
弟に詰め寄る兄。
おどろく弟。
そして、エサ台から弟を叩き落とす。
野良猫とカラスにエサをやっていた婆さんだが、 ついに先日、堪りかねた近所の人に注意されてエサやりを止めたようだ。 そして近所のカラスたちは元の秩序を取り戻した。
すると、ハシボソの家族は翌日から何事もないように戻って来たではないか。
まるで魔法が解けたようだ。
8月27日のことだ。
しばらく見なかった内に、このハシボソのお父さんは換羽の時期を迎え、
すっかりハゲまだらになっている。
ハシボソガラスは地肌に近い部分の綿羽が白いので、
換羽の時期にこのように白と黒のまだら模様になる。
そして兄弟も。
エサ台では喧嘩をしていたが、
やっぱり仲はよいようだ。
下が末っ子。
兄にピッタリと寄り添う。
通常、子ガラスは巣立ってから2ヶ月から長くても半年ほどで親元を離れていく。 この子ガラスたちは順調に成長を続け、 すでに立派なカラスに成長した。 もういつでも、ここを離れることができるだろう。
2017年9月6日公開