私は先日、モンジロウが生まれた牧場を再び訪れた。ヤギの飼育について牧場の獣医師に相談するのが主な目的だが、久しぶりにピエールの様子も見たい。モンジロウのお母さんにも会いたかったのだが、すでに引き取られていったとのことだ。
牧場は道路を挟んだ向かい側に規模を縮小して移転していた。 以前の自由な感じが好きだったのだが、いろいろ事情があるのだろう。
駐車場から見えるところにヤギの親子がいる。子ヤギの兄弟はまったく模様の異なる二頭だ。乳牛のような白黒模様と、もう一頭はグレーの毛並み。手前にいるのがお母さん。
この牛模様の子ヤギは人間が大好きらしい。 客が来るたびに愛嬌を振りまいている。 こういうタイプはすぐに買い手が見つかるだろう。
よく見ると頭からツノがほんの少しだけ顔を出している。
ヤギの性格というのはこの時点でだいたい決まっているのだ。 もう一頭の子ヤギはそれほど人懐こくはない。
ところでモンジロウはどうだったかというと、子ヤギの頃のモンジロウは牧場内を全力で走り回り、ジャンプして柵を越え他のヤギに乗りかかるなど暴れ放題だった。売れ残りだった理由は言うまでもない。
ところでヤギといえば白色のを思い浮かべるが、あれは日本ザーネンという品種であり、その他の雑種は猫のように様々な模様が発現する。この母ヤギは野性的な保護色で規則的な模様をしているが、これも雑種である。猫でも黒猫から本来の野性的なトラ模様の子猫が生まれるが、それと同じ現象だろう。非常に興味深い。
奥に進むとウサギがたくさんいる。なぜこんなにたくさんのウサギを飼育しているのか気になるが、それよりも奥にヤギがいるのが何ともシュールな光景である。
そしてこの一番奥の広いスペースがヤギ専用コーナーだろう。たくさんのヤギがいる。
あれ!? ヤギだけかと思ったらロバもいた。あぁそうか、さっきのウサギもそうだけど「草食」というカテゴリーで同居させているのか。
これはまだ子ヤギかな。巨体のロバの隣だとサイズ感が分からなくなる。
みんなゾロゾロと私の方に寄ってくる。エサ用のニンジンが売られているのだが、それを期待しているのだろう。
しかし何も無いと分かると直ちに解散・・・。
お腹の大きなヤギもいる。もう間もなく出産を迎えるのだろうか、何だか苦しそうな表情だ。
ロバに声を掛けていると、奥の方からゆっくりと現れた栗毛色の立派なヤギ。
「あっ!ピエールだ!」
半年ぶりの再会だ!
「元気だったか? ピエールよ!」
私は嬉しくてピエールを撫でまわすのだが、 彼はそうでもないようだ・・・。
うん、まあ、そんなもんだろう。だけど私と一緒に過ごしたことは憶えているはず。今はこの群れの中で仲良くやっているようだ。
それにしてもピエールは立派なヤギだ。太くて長いツノ、馬のような毛並み。これはまさにヤギ界のイケメンである。
隣のロバと並んでも見劣りしない。スタッフにピエールの様子を聞いてみると、このロバと相性が悪く威嚇されたピエールが柵を越えて逃走したことがあるそうだ。
ピエールとの再会を懐かしむ私だったが、その話に当時の苦労が蘇る。金具を破壊して逃走、そしてヤギ小屋を破壊、さらには除草作業を拒否・・・。
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名残惜しいが私はあまりゆっくりしていられない。カラスとヤギが家で待っているのだ。牧場の獣医さんにヤギの飼育についていろいろ教わり、帰路に就くことにした。
家に戻ると、モンジロウはウッドデッキでミケと一緒に昼寝をしていた。
最近は散歩を拒否するようになったので、ヒヅメがアスファルトで削られることもなく伸び放題なのだ。 牧場の獣医さんに教えてもらった方法でヒヅメを切ってやる。ヒヅメのどの部分までカットするかは素人には難しいのだ。
切り取ったヒヅメを見てみると意外に柔軟でゴムのような質感である。
これも皮膚の細胞から分化したものだが、すでに死んだ細胞の集まりであり神経や血管はない。
続いて後ろ足のヒヅメも切る。しかしこの状況でモンジロウがおとなしくしているはずもなく、直後に暴発。激しい抵抗にあい危険を感じたために作業を中断した。
仕方ないからアスファルトの上を歩かせて削ることにしよう。
ところで、わざわざ牧場の獣医さんのところまで行かなくても近所に馴染みの獣医さんもいる。しかしヤギを飼い始めたころ近所の獣医さんは「僕はヤギは診ないからっ!」と、まだ何も頼んでいないのに強い拒否反応を示していた。そのときは「専門外の動物は診ない」というプロとしての姿勢なのかと思っていた。だがしかし、最近になってヤギの話になったときにその獣医さんは「草食動物は意外と怖いよ。くれぐれもケガしないように気を付けてね。本当に怖いから!」と言っていた。
私の勝手な想像だが、その獣医さんはおそらく学生時代の実習中にヤギに蹴られたか、あるいは頭突きでもされて酷い目にあったのだろう。
そしてそれがトラウマになっているのではないか?
確かに可愛いだけでは語れない相性の難しい動物だと思う。
< 本日のオマケ >
~ 親子の別れ ~
牧場でモンジロウのお母さんに会えなかったのは残念だったが、偶然にもその直後にモンジロウのお母さんを飼育している方からメールがあり、様子を聞くことができた。
これがモンジロウのお母さん
↓
名前は「ふうちゃん」
白ベースに赤茶色の班がある珍しい模様である。
目頭の黒色がチャームポイント。
そして立派なツノも備えている。
*写真を掲載しても構わないとのことなので使わせてもらいました。有難うございます。
そしてこれは今年の三月上旬に撮影したモンジロウ。この頃はまだ乳飲み子である。 モンジロウを引き取った日、首輪を付けられて連れていかれるモンジロウに母ヤギは悲痛な叫び声をあげていた。そのためゆっくりと母ヤギを見ることもできずに牧場を後にしたのだった。
牧場の獣医さんに聞いたのだが、子ヤギがどのくらいのサイズに成長するかは母ヤギを見ればわかるそうなのだ。母ヤギがこのサイズならモンジロウが巨体になることはないだろう。
離れ離れになった親子。我が家に来た頃はしばらく寂しがっていたモンジロウだが、半年たった今では立派なヤギに成長したのだ。
2019年10月6日公開