10月6日 早朝
朝食を食べに来たハシボソのお父さん。最近は子ガラスを連れてこなくなったが、子ガラス兄弟は独立したわけではなくまだ両親の縄張りにいる。
後から来てドッグフードをついばみ始めた子ガラスにブチキレるお父さん。
どうやらお父さんは本気で子ガラスを追い出しにかかっているようだ。
毎年、夏の終わりごろから親鳥は自分の子どもに対して冷たく当たるようになる。
子どもの独立を促しているというよりも、単に成長した子どもが邪魔な存在になっただけだろう。自然界の動物は、こうして子離れするようにできているのだ。
それに比べて人間の子育ての長いこと。生物的には15歳くらいで独立できると思うが、いまや大学卒業までの22年という途方もない年月をかけて親は子供に与え続けるのだ。
さて、季節はもう秋、春に生まれた子ガラスにとっては試練の季節だ。
今年の夏はハシブトの子どもたちが庭に遊びに来て賑やかだった。あの個性豊かに育った「タワシブトくん」は、あれからもカラス小屋に頻繁に遊びに来ていた。
「価値観の違い」 ←タワシブトくんのブログ
どうやらウチのアディと友達になりたかったようだが、アディはまったく関心を示さず友情は生まれなかった。
そんなタワシブトくんも、最近はすっかり見なくなった。すでに親元を離れて独り立ちしたのだろうか。
10月13日 早朝
ハシボソのお父さんが卵黄をとりにきた。
子育てのベテランである彼がこれまでに育てた子ガラスの数は20羽以上。そして彼の年齢は少なくとも14歳以上だ。野生のカラスとしてはかなり高齢だろう。特定のカラスをこれほど長期間にわたり観察した事例は珍しいと思う。
お父さんの後を追って、スゥーと子ガラスが飛んできた。
子ガラスはあどけなさが抜けて、少し大人びた表情になったようだ。
お父さんは我が子に残すことなく卵黄をクチバシいっぱいに詰め込んだ。
どうする、子ガラスよ。
こらえきれずにお父さんの元に走り出した。
そして全力でお父さんに甘える。
体格は立派になったが、中身はまだ子どもなのだ。
しかし、お父さんは子ガラスを無視して行ってしまった。
もう、以前の優しいお父さんはいないのだ。
独り、卵黄の破片を拾う子ガラスであった。
秋はちょっとせつない別れの季節。
2024年10月20日 公開