夏が終わるころから徐々に庭の草丈は低くなっていた。 モンジロウは何も考えていないようだが、この「変化」をどう思っているのか?
危機感をもっているようには見えないが、どうだろう?
地面の草が乏しくなってきたので、背伸びをして木の枝をたぐり寄せて食べる。
しかし手の届くところの葉はすでに食べ尽くしてしまった。
これは11月中旬の様子である。
そして12月・・・。
夏までは雑草が生い茂っていた庭だが、いま思えばそれは食べ物に囲まれた幸せな暮らしだったのだ。
もう気のせいではない。食べ物がほとんど無いことは見ての通りだ。モンジロウもさすがに危機感を持ち始めたころだろう。
晩秋に咲き誇るコスモスは最後の楽しみ。
さて、これからどうやって食べ物を調達しようかな?
この竹はどうだろう? ちょうど邪魔に思っていたところだ。
とりあえず食べるようだが、あまり好きではないようだ。
それに、パンダじゃないんだからこればかり食べさせるのも気の毒だ。
12月下旬
暖冬の影響で落葉が遅れていた木々も、ほとんど葉を落とした。
見渡しても食べられるものがほとんど無い。
いよいよ贅沢をいう余裕はなくなった。
庭の竹やシュロの葉、キウイの葉などを集めて与える日々が続いた。
そんなとき、近所の爺さんがとれたての大根をくれた。
これはありがたい
爺さんには悪いがモンジロウに食わせた。
近所の果物農家からはミカンの葉を大量にもらった。
ミカンの葉はモンジロウの大好物なのだ。
しかしこれも二日ともたずに食べ尽くした。
モミジの葉が大量に落ち地面が赤く染まる。
いよいよ、これが最後の恵みとなる。
しかしそれも突風にあおられ消えていった。
ついに我が家の庭は不毛の地になったのだ。
我が家の庭だけで自給自足し「0円」でヤギの飼育をすることをテーマにしてきたが、その目標はここにきて頓挫。 冬用の種まきを怠ったため仕方がない。夏ころは「何とかなるのでは?」という根拠のない期待があったが、考えてみれば無理に決まっている。
そしてついに・・・、
牧草を購入した・・・。
飼料屋さんに注文し自宅に届いた牧草。
種類は「チモシー」。チムニーじゃないよ。
段ボール一個分くらいのサイズだが重量が30kgもある。
そのようには見えないが、これで一ヵ月以上はもつそうだ。
開梱し紐を切ったとたんに
「ボムッ!」と、草が膨張した。
どうやら機械で圧縮してあったようだ。
これなら本当に一ヵ月もつかもしれない。
しかし・・・、 食いつきがあまりよくない。
今までは庭の新鮮な草を選び放題だったから無理もないか。
イラだつモンジロウは牧草を箱ごとドリブルして放り投げた。
しかし、好き嫌いを言う余裕がある内はまだ大丈夫だろう。
それよりも、オヤツ用に買ったこのウサギの餌は気に入ったようだ。
アルファルファを乾燥してペレット状にしたものだが、いい香りがする。
一度食べたらやみつきだ。
それ以来、この赤いパッケージを見ただけで寄ってくるようになった。
2kg入りで二千円以上したから、さっきの牧草の10倍ほどの値段である。
こんなの毎日食べさせていたら家計崩壊だ。
ヤギにコスト意識などあるはずもなく・・・。
すごい食べっぷり。
容器を床に置こうとするも、奪い取るように囲い込み食べ始めた。
なにが違うのか知らないが、複数用意した餌の中でこの餌にだけ執着するのだ。
まるで飲み屋のカウンターで泥酔した客のようだ。
この姿はヤギとして、あまり格好のいいものではない。
この時の顔が怖いが、実際に今は手を出さない方が無難。
さて、餌の用意は何とかなったがあとは寒さ対策である。
しかし、用意した小屋には入らずにその上で寝ている。
よく見ると体毛がフサフサになり冬毛に変わっていたのだ。
ペット用の温熱プレートも設置したが、これも不要らしい。
猫の座布団となった…。
寒さの心配はとりあえず要らないようだ。
2020年1月3日 公開