6月27日
この数日、子ガラスは活発に行動している。
そして、親鳥よりも先にエサ台に来るようになった。
この日の朝も一番乗りだ。
小屋の屋根にいるのはお父さん。
最近は、子ガラスに自らエサを取るように促していた。
さて、子ガラスは目の前にある卵黄を取ることはできるのか?
しばらく卵黄を睨みつけ、クチバシで突いたりしている。
そしてついに、恐る恐る卵黄を拾い上げた。
昨日まではエサ台の上でただ口を開けて待つばかりだった子ガラス。
巣立ちから50日目にして、ついに自らエサを拾うことを覚えたのである。
些細なことのように見えるが、
この子ガラスは今、重要な成長段階を超えたのだ。
お父さんは、
「ギャー、ギャー」と鳴き声を上げている。
我が子の成長を称えているようだ。
子ガラスは卵黄をくわえ飛び立った。
初めて獲物を仕留め、意気揚々と歩く子ガラス。
昨日までは、お父さんから口移しで食べ物をもらっていた。
ヒナのように上を向いて大きく口を開け、
喉に食べ物を押し込んでもらうのだ。
そんなヒナの姿は昨日までのこと。
しかしまだ、自分で獲物を細かく切り、口に運んで飲み込むという行為が苦手なのだ。
大きな獲物をとったものの、うまく食べられない。
その間、お父さんはエサ台に残る卵黄の欠片を食べていた。
しかし、これではお父さんのお腹は満たされないだろう。
だが、ここで譲るのが親というものだ。
ぼんやりと我が子を見守るお父さん。
おや!? お父さんが子ガラスに近寄っていく。
子ガラスはうまく卵黄を飲み込めず、もたもたしている。
何だか嫌な予感がするのだが、 まさか・・・。
何と! お父さんは我が子から獲物を奪ったではないか。 いや、正確に言うと「奪った」という感じではない。 もっと何だかこう、セコい感じである。
父:「ちょっといいかな、お父さんに見せてごらん。」
子:「ぼく、がんばったよー。」
父:「どれどれ、なるほど・・・、」
「(いきなり)パクーッ!」
子:「あっ ・・・、」
ざっと、こんな感じである。
「子ガラスのためにエサを取り分けてやったのでは?」
残念ながらそれは違う。
成長した子ガラスはいずれ、親鳥にとってライバルとなるのだ。
この光景はその予兆を示しているに過ぎない。
そして立ち去るお父さん。
子ガラスは成長の階段を上ったが、同時に厳しさを知ることになった。
おそらく、お父さんと子ガラスの蜜月の日々は、もうすぐ終わりを告げるだろう。
お母さんはその間、屋根の上から一部始終を見ていたのであった。
2018年7月1日公開