こちらはアディ。 新築したカラス小屋に引越して以来、 頻繁に枝から落ちてケガをするようになった。 その度に生えかけていた風切羽が折れてしまうのだ。 最近は尾羽も痛めてしまい、 ご覧の通りボロボロになり、 カラスとしての威容が失われている。
旧カラス小屋に比べると、枝の高さが全体的に30cmくらい高くなっているが、 これがいけなかった。
そこで枝の配置を変えて、 床の方まで階段状に枝を設置してやった。
日頃のカラスの動線をよく観察し、見極め、 計算しつくした配置だ。
だがそれは徒労に終わった。
アディは足を滑らせて落下しているわけではなかったのだ。 以前から何となく感じていたが、 このカラスは時々、飛べないことを忘れてしまうのだ。
私が帰宅してカラス小屋に近づいてくるのを見て、 興奮しておもわず飛び上がるが、次の瞬間、 アディは「あっ!」という表情を見せながら床に落下するのだ。
自分が飛べないことを忘れたまま飛び上がり、 次の瞬間に我に返るが時すでに遅し・・・。 床に羽を叩きつけるのだ。
ケガをするのはいつも左側だ。 元々、骨折の影響で羽がうまく動かないうえに、 今は風切羽が欠損しているので、 余計にバランスが悪いのだ。
ご覧のように、またしても成長途中の風切羽を折損してしまった。 血がポタポタ垂れている。 ストローのように見えているのは成長途中の羽の軸で、 ストロー状の筒が伸びた後に先端から羽が展開してくるのだ。 成長途中のこの段階は血管が通っているので、 損傷するとこのように出血する。
枝の配置には最善を尽くしたが、アディがこの調子ではどうしようもない。 だからと言って、この状況をこのまま放置するわけにもいかず・・・。
枝を極端に低くすればストレスを与えるだけだし・・・。 こうして10日間ほど考えた私は最終的な結論に達した。
その結果がこちら ↓
カラス小屋の窓の高さに網で仕切りを入れ、 ロフトのような二段構造にしたのだ。
金網は一部を段違いに設置することで、 今まで通りに床にもアクセスできるようにした。
こういう時に一番乗りするのは決まってアディだ。 好奇心が旺盛である。 さっそく金網に降りて確かめる。
アディの口が開けっ放しなのは、 驚きを隠せずにいるからだ。
「今まで届かなかった場所にも手が届く。」
こんな仕切りをいれたらストレスだろうな、 と心配していたが、 どうやらその心配は要らなかったようだ。
意外にも好評である。
カラス目線で言うと、
「二階建てになり床面積が二倍!」
と、いうことだろう。
すっかり上機嫌のアディは、 金網をジャンプしながら私のところに飛んで来る・・・、
カラスが悪だくみをしているときの表情だ。
今アディは、私の鉛筆を狙っている。
隙をみて鉛筆を奪い取る。
今日はサービスで盗らせてやっているが、 普段、作業のためにカラス小屋に入ると、 ポケットの中の道具やネジが次々と消えていくのだ。
おかげで作業はなかなか進まない。
そう、カラスは人が持っている小物を欲しがるのだ。 取り返そうとすると激しく抵抗する。 凄い執着心だ。
こうなるともう、返してはくれない。
だが、すぐに飽きる。
鉛筆をさんざん撫でまわし、飽きたころ・・・、
さて、いつもの仕事を・・・。 両足で鉛筆を挟んで・・・、
そして~、
「大きく振りかぶって~、」
「破壊!!」
フルスイングの頭突きを繰り返すアディ。
こうして弄ばれた私の鉛筆は、芯を残しつつもその役目を終えた。
2017年6月11日公開