今朝まで断続的に降っていた雪は止み、昼前には青空が見えてきた。 最近、野のカラスたちは縄張り争いに明け暮れている。 巣作りの季節が近いのだろう。
三羽のハシブトガラスと、二羽のハシボソガラスが空中で喧嘩をしている。 よく見ると、仲間どうしで合図を送りながら、相手を追い込んでいる。
私が餌付けしたハシボソガラスの夫婦の方が優勢のようだ。 毎朝、卵黄を食べさせているおかげだろう。スタミナが違うのだ。
午後からは一転、雪雲に覆われ、再び雪が舞い始める。
今日は一日中、外のカラスがうるさかったが、 次第にハシブトガラスの低い唸り声が聞こえるようになった。
窓の外を見ると、一羽のタカを、先ほどのカラスたちが追い回している。
左がタカ、右がカラス。
カラスがタカを追っている光景だ。
日頃、仲の悪いカラスたちも、共通の敵が襲来するときには協力し合うようだ。
だが、追われていたタカが、突如、背面飛行から急降下。 カラスに向かって急降下する。
一羽のハシブトガラスに照準を絞り、 執拗に攻撃を仕掛ける。
最もスタミナが無いヤツを見抜いているのだ。
カラスもとっさに急降下する。加速能力はタカの方が上だが、 旋回性能はほぼ互角のようだ。
二羽並んだ。
翼面積はタカの方が狭く、高速向きの体系である。 対してカラスは、広い翼面積を生かした低速のアクロバット飛行が得意だ。
ものすごい速度で繰り広げられる空中戦だ。カメラのピントが全く追いつかない。
森の向こうまで飛んで行ったかと思えば、 しばらくして戻ってくる。
先程と同じく、カラスが追われる側だ。
接近し、互いの視線を意識する。
タカが追いつくも、カラスの反撃を警戒して間合いをとる。
タイミングを見計らい、カラスがいきなり急減速。
タカの後ろをとった!
ここで攻守逆転!
かと思ったが、いったん距離をとる。スタミナが限界に近いのだろう。
時計を見ると、もう、かれこれ30分以上、断続的にいがみ合っている
タカはいったん上昇し、そこから再び攻撃態勢を整える。
だが、カラスも負けてはいない。
体制を整えて迎撃する。 にらみ合いながら空中戦は続く。
二羽は空高く上昇したところで、タカが急旋回。
カラスも慌てて仰向けに旋回する。
ここで両者、同じタイミングで体をひねり、背面宙返り。
やはり旋回能力はカラスの方が上だ。
瞬時に身をひるがえし、 急降下する。
だが、これで再びタカに背後をとられるのだ。
しかし、ここで双方とも、スタミナの限界を迎えた。
この後、引き分けのまま、空中戦は終わった。
引き分けといっても、タカにとっては手痛い敗北だろう。 なぜなら、これにて彼は今日の夕飯は抜きになるからだ。
捕食者たるタカが、このように長時間も互角の相手と空中戦を繰り広げる。
狩人として非常に効率の悪い行動だ。 カラスとの無駄なバトルにのめり込む姿を見ると、 すでに彼は、空腹で判断力が鈍っているのだろうか?
あるいは、彼にとって今日のカラスは捕食の対象ではなく、 プライドのために戦っているのか? そう、思わせるような一幕だった。
それにしても、カラスの戦闘能力は侮れない。 食物連鎖の頂点たるタカと、空中戦で互角のドッグファイトが可能なのだ。 カラスがなぜ現在、ここまで栄えたのか?その理由の一つを見た気がする。
2017年2月11日公開