先週からJR錦糸町駅の券売機にいるハシボソガラスが話題になっている。 人懐っこく、通行人に愛嬌を振りまいている姿がテレビで大きく報道されていた。 こうなるともう、ただでは済まないだろうと思っていたところに今朝、 市民により捕獲されたというニュースを見た。
当サイトではニュースに対してコメントするようなことはしないのだが、 あまりにも誤解が多いのでこの件に言及したい。
ニュースの中でも鳥獣保護管理法が持ち出されているが、 確かに都内においてこの時期にカラスを捕獲することは法律違反である。 だがしかし、カラスやスズメなどの狩猟鳥を飼育することは違法ではなく、 許可や申請などは一切不要である。 狩猟鳥の場合、捕獲と飼育は別の問題なのである。 これは私の解釈ではなく、法律でそのようになっている。
そして今回、現場を確認した鳥類の有識者の先生によって、 明確に「飼育されたカラスである」と断定されている。 ここが本件の最も重要な点である。 この先生は撮影現場では的外れな一般論ばかり話していたが、 この点だけは間違いないだろう。
よって、今回のカラスは「飼育されていた狩猟鳥=単なるペット」なのである。 そうなると何が違ってくるかというと、 鳥獣保護管理法はもう適用されず、 代わって動物愛護法の適用範囲内となる。 この法律は意外にも飼育下のカラスにも適用されるのだ。 よって、この件は、飼育していたインコが逃げ出したのと同じことである。
あのカラスが飼い主の元から逃げ出した迷い鳥なのか、 あるいは飼い主が都内で放鳥したのかは不明である。 だが今回、それなりの有識者により「飼い鳥である」と断定された以上、 まずは保護して直ちに飼い主を探すべきであった。
あるいはもし、飼い主が放鳥していた場合だが、これは問題である。 それは人に馴れたカラスを都内に放鳥する行為が「遺棄」にあたる可能性があるからだ。 これは状況によっては元の飼い主が動物愛護法違反に問われる行為である。
市民によって保護された今回のカラスだが、 取材に対して「1ヶ月程度ようすをみてから長野県に放す」と言っている。 それはおそらく方便であり、自分で飼育するのだろうと私は思った。 むしろそうするべきだ。
だが、もし本当に放鳥するのなら問題である。 先程と同様、こんなに人に馴れたカラスを野山に放鳥する行為そのものが「遺棄」であるからだ。 例えると、動物園で甘やかして育った動物を突然、サバンナに放すようなものだ。 もっと分かりやすく例えると、 誰かが大切に育てた娘さんを夜の歌舞伎町に置き去りにするようなものだ。
ところで今回のカラスだが、 ヒナから飼育したからといって、あんなに愛嬌たっぷりの面白いカラスになることは稀だろう。 あれは、あのカラスが持つ特有の個性であり貴重な存在だと思う。
そんなカラスの行く末が気になるところだが、 映像を見る限りカラスを保護した市民は善良なカラス愛好家のようだ。 良い人に拾われ一件落着したと思いたいところである。
保護した謎の市民の方、そのカラスを大切になさって下さい。
2018年5月10日公開