カラスブログ2020年2月23日 命の重さは誰が決める?

カラス

昨年巣立った子ガラス三兄弟。

兄弟のうち二羽は9月に親元を離れたが、もう一羽は親元に残り新年を迎えたのだった。

今年もまた、ニートのごとく居座るのかと思っていたところ、先月ついにここを追い出されたのであった。

1月20日早朝、鉄塔の上にとまる子ガラスをお母さん(右)が攻撃する。


カラス

追い払われては戻ってくることを繰り返したが、その日の昼には子ガラスはいなくなっていた。


カラス

その後、子ガラスは一度も戻ってくることはなく、再び夫婦だけの生活に戻った。



あの騒々しかった日々が懐かしい。


カラス

独立していった子ガラスたちは今頃、厳しい環境のなかで日々を過ごしているのだろう。 そして幼いころを過ごしたこの場所も、遠い記憶となっていくのだ。


そして今年もやってきた!

カラスの巣作りの季節だ。

カラス

2月11日。送電鉄塔の最上段に巣を構えることに決めたようだ。 ここは昨年と同じ場所である。三羽の子ガラスの巣立ちに成功した経験から、今年もここを選んだのだろう。

今回の巣の設置場所は塔体内であるため撤去される心配もない。


カラス

夫婦で協力してせっせと枝を運んでいる。


カラス

辺りを警戒し迂回行動をとりながら巣に向かう。


カラス

もうすでに巣の外枠は出来上がっているようだ。

いよいよ今年も始まるカラスたちの子育て。


ところが・・・、

一生懸命に巣を作っているハシボソ夫婦だが、今回、彼らを悲劇が襲うことになるのだ。 ちょうど卵が孵化するころになると思うが、その頃に鉄塔の工事が始まる予定なのだ。 その際に工事の足場作りの邪魔となれば巣は撤去される運命なのである。 撤去されなかったとしても巣の真横で工事なんてされたら当然、育雛を諦めて巣を放棄するだろう。

撤去された場合、巣の中のヒナはどうなるのか? 私は電力会社にヒナの保護を申し出た。すると彼らも「可能な限り殺生は避けたい」とのことだったので、許可権者である県庁及び市役所との交渉を電力会社に代わっておこなった。しかし努力もむなしくヒナの助命は絶望的となった。

巣のヒナは「殺処分」の運命となる

なぜ、そのようなことになるのか?

その理由は、自治体がカラス駆除の許可をするにあたり、捕獲許可したカラスの行き先を殺処分しか用意していないためである。 しかし今回のケースは頭数管理や害鳥駆除が目的ではなく、あくまでも工事の邪魔となるための撤去なのだ。 つまり巣の中のヒナを殺処分にする正当な理由もなければ必要性もないのである。しかも私が「巣の撤去の際はヒナを保護させてほしい」と申し出ているのだ。

それなのになぜ役所は頑なに殺処分に拘るのか?

ヒナを保護するための許可をなぜ出せないのか?

それは「愛玩飼養を目的とした捕獲は認めない」という最近登場した環境省指針が存在するためである。 これは日本野鳥の会が再三にわたり提言し、環境省指針に盛り込むことが実現したものである。その結果、役所は今回のような事例においても飼養目的の捕獲許可を出せなくなってしまったのだ。

この日本野鳥の会の提言だが、かつて、愛玩飼養を目的としてメジロなどが乱獲されたことがあり、そのようなことから野鳥を保護する目的でなされたものである。 そしてその提言により愛玩飼養を目的とした捕獲は許可条件が厳しくなっていった。ここまでは野鳥保護活動として私も理解できる。しかし日本野鳥の会による要求はそれに留まらず「野の鳥は野に!」を合言葉にさらに厳しい提言を続け、ついには2011年、彼らの考えを全て指針に盛り込むことに成功したのだ。つまり、「愛玩飼養を目的とした捕獲は例外なく一切認めない」という極端な主張が通ったのである。その結果、役所の捕獲許可制度は硬直したものになり、狩猟鳥獣であるカラスにまでその考えを当てはめるに至ったのだ。

そもそも、狩猟鳥獣であるカラスには飼養登録の制度が存在せず、誰でも許可なく飼育できる。もちろん飼養を目的とした捕獲も狩猟期間やルールを守っている限り可能だ。だがしかし、今回のように狩猟期間外に役所に捕獲許可を求めた場合、殺処分しか許されないのである。日本野鳥の会による提言がこんな形で矛盾を生んでいるのだ。

だが、まだここで終わりではない。「愛玩飼養を目的とした捕獲は認めない」というのは、あくまで法的拘束力のない指針であり法律の条文ではないのだ。そう、ここで意外なことだが、鳥獣保護管理法ではまだ野鳥の飼養も飼養目的の捕獲も禁止されていないのである。 つまり役所の判断は鳥獣保護管理法に基づいたものではなく、環境省の指針をもとに自治体が独自に策定した「鳥獣保護管理事業計画書」によるものだ。 そして私が危惧しているのは、次の法改正でこれらが法律の条文に盛り込まれかねない、ということである。

このような特定の団体の一方的な価値観がそのまま法律に反映されることは本来、あってはならないことだ。今後、状況がさらにエスカレートすることを阻止するため、また、現状の法律の運用において間違った部分を正すため、当サイトは引き続き努力していく次第である。


カラス


そんなことはカラスたちには知るすべもない。


今はただ彼らの姿を空しく見守ることしかできないのである。


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参考文献

日本野鳥の会HP 「野鳥をペットとして飼うための捕獲許可が中止へ」

鳥獣保護管理法 第19条(飼養の登録)

第12次鳥獣保護管理事業計画書

更新履歴

2020年2月23日 公開

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