ぽつぽつと桜が咲き始めた。
今年も春本番。
いよいよカラスの子育てシーズンである。
さて、あの子ガラスはどうなったかというと・・・。
3月13日 早朝
夜明けからハシボソの声が響いている。
周囲が明るくなったところで観察してみると、 声をあげていたのはハシボソのお母さんだった。
ケンカのときの声と似ているが様子が少し異なる。
そして次の瞬間、電線にとまる我が子に猛烈な勢いで襲い掛かった。
夜明けから響いていた声は、 子ガラスを威嚇するお母さんの声だったのだ。
何度も追い払われる子ガラスだが、 その後すぐに戻ってくる。
この子ガラスはお母さんのいうことは全く聞かないのだ。
上空を行ったり来たり。
執拗に子ガラスを追い回している。
明らかにいつもとは様子が違う。
どうやら今日を決別の日と決めたようだ。
一時間が経過した。
太陽が昇り周囲が明るくなってきた。
ここでお母さんの攻撃は激しさを増す。
お母さんはついに、子ガラスに空中で接触し足蹴りを食らわせた。
その勢いで森の向こうまで子ガラスを追い払ってしまった。
いつもはお母さんをバカにしている子ガラスだったが、 さすがにその気迫に負けたようだ。
ところでその間、お父さんはというと・・・、
特に何もすることなく傍観していたのであった。
それから二週間が過ぎた。
あれ以来、子ガラスは戻ってくることはなかった。
「あの子ガラスがついに独立したのだ。」
2018年5月に巣立ってから10カ月。
その年の秋に独立することなくニートのごとく家族と暮らし、 桜の咲く今、ついに独立したのであった。
この図太さとたくましさがあれば、どこへ行ってもやっていけるだろう。
夕方、街の電線にはたくさんのカラスが群れている。
あの子ガラスはうまく仲間に入れたのだろうか。
これからは家族ではなく、仲間のカラスたちと競い合いながら成長していくのだ。
またどこかで会おう!
2019年3月31日公開