弱肉強食だった1万年前の地球。そこで生存競争を勝ち抜き、 頂点に君臨したのが我々人類。 そこについてきたのは犬と猫。彼らは食物連鎖を超越して、人類の友となったのだ。
そして遅れてやって来たカラスの皆さんは・・・?
自ら人間社会に飛び込んできたのはよいが、第三の人類の友になりえるのか?
カラスは古来から日本に生息する鳥だ。
昔の日本人とも馴染みが深く、童謡や昔話、絵画にも登場し神社で祀られていたりもする。
特に愛されてはいないが害も無い、
空気のように日本の風景に溶け込んだ存在だったのだろう。
日本の映画やドラマでは、夕方のシーンになるとカラスの鳴き声が収録されている。
もし多くの人が、映画の中で流れているカラスの鳴き声に気が付かない、ということなら。
カラスの存在はまさに「風景に溶け込んだもの」といえるだろう。
だが長く続いた日本人とカラスの良好な関係に近年、暗雲が立ち込めている。
ゴミを漁るカラス、そして散らかるゴミ。
古来より「特に害は無い」存在だったカラスが、
今、街では害のみが目立ち「害鳥」の認定まで受けてしまっている。
昔は食べ物をゴミに出すような人はいなかっただろう。 だから人間とカラスは適度な距離をとって暮らしていた。 現代ではどうだろうか? カラスは人間が好きで街に居るわけではない。 廃棄される食品が好きで集まっているのだ。 家庭や飲食店から多量に放出される食べ残しのゴミ。 その中でも飲食店から出るゴミは大量かつ新鮮だ。 だからカラスは早朝の都会に群れを成してやって来る。 摩擦の原因を作っているのはカラスではなく人間なのだ。
カラスの仕事は動物解体業である。 本来、ハシブトガラスは肉食獣が仕留めた動物の残りを狙って集まってくるのだ。 死んだ動物は最後はカラスに食われ骨だけになり、やがて土に還っていく。 現代においても、 食物連鎖の頂点たる人間の食べ残しを狙っている。 彼らはいつの時代も変わらぬ仕事をしているだけなのだ。
多くの自治体は今、カラス対策としてカラスの個体数減少を目的に駆除をおこなっている。 だが、どうだろうか?街からカラスが消えることはない。 つまりカラス憎しで無益な殺生をしているだけで、 何の成果も上げていないのである。 カラスを街から追い出したいのならゴミの出し方を変えるしかないだろう。 飲食店のゴミの回収は自治体に指定された業者が有料で行っている。 それならばカラスのゴミ漁りが多い地区は、 散らかしたゴミの掃除の料金も加算すればよいのである。 追加料金を避けたいのであれば、各個人、各店舗がゴミの出し方を工夫するべきだ。 特に難しいことは無い。
極論を言えば、 カラスはあくまで人間にとって不要になった食べ残しを食べているわけであり、 人間を襲ったり病気を媒介することもない。 私たちの安全を脅かすような存在ではないのである。 ゴミ対策にコストを掛けたくないのであれば、 現状を黙認するしかない。
このコーナーでは都会に群がるカラスを対象にしており、 畑の害鳥としてのカラスとは別の問題として扱っている。
2016年12月3日公開