カラスの子育て2017 その5

9月の半ば頃からは家族が揃うことはほとんどなくなった。 おそらく長男は独り立ちしたか、あるいは周囲を単独で行動しているのだろう。 元々、家族にベッタリ寄り添うタイプではなかったのだ。

カラスの家族

9月22日

両親と末っ子がやって来た。 末っ子は未だにお父さんにエサをねだっている。 ちなみにこの家族は食事の順番が決まっていて、必ずお父さんが一番だ。


カラスの家族

だが、お父さんは子離れしたのか態度が厳しくなり、 末っ子がどんなにせがんでも無視するようになった。

自分だけ食事を終え飛んで行ったお父さん。それを追う末っ子。

お母さんはそれを見守っている。


カラスの家族

次の日も三羽でやって来た。 後ろが末っ子だ。


カラスの家族

まだらハゲになっているが、これはヒナの頃の羽毛が生え替っているのだ。

両親の換羽時期とあわせて家族全員そろってハゲている。


カラスの家族

お父さんと向かい合わせでエサ台に止まるが、 お父さんに威圧されてうろたえる。 (左が子ガラス)


ここで、エサ台を狙って仕掛けていた監視カメラを確認すると、 この一部始終の映像が残っていた。



カラスの家族

カメラには、お父さんと並んでエサ台にいる末っ子の姿があった。

大きく口を開けてエサをねだるが、すっかり無視されている。


カラスの家族

仕方なく自分でエサを取ろうと、おそるおそるクチバシを伸ばすが・・・。


カラスの家族

お父さんに威嚇されてしまった。


カラスの家族

そしてエサを全て食べたお父さん。

子ガラスを残して飛んで行ってしまった。


カラスの家族

何も無いエサ台に呆然と立ち尽くす末っ子。


そして二週間が経った。

カラスの家族

10月11日

朝から珍しく、鉄塔にはハシボソの家族が揃っている。


カラスの家族

だが、親鳥たちは子ガラスを激しく威嚇し、遠くへ追いやってしまった。


カラスの家族

電線にとまる両親。

周りからは子ガラスの声が聞こえてくるが、 子ガラスが近づくたびに追い払っている。

こうして子供が成長すると、親鳥は自分の縄張りから子供を追い払うのだ。 その時の親鳥の心境は、 「子供の将来を想って心を鬼にしている」というよりは、 成長した子供に対して興味が無くなり「元の気楽な生活に戻りたい」 これが本音だと思う。


カラスの家族

それ以来、子ガラスの姿を見なくなり、再び夫婦のみで生活するようになった。

子ガラスはこの試練を乗り越えて立派なカラスに成長するのだ。

感慨深くもあるが、少し寂さをおぼえる。


二週間後

あの子ガラスたちはどうしているだろうか。 離れていった子ガラスを懐かしく想い、庭を見渡すと・・・。



カラスの家族

10月24日
庭の木の細枝にとまるお父さん。

そして下の枝にもカラスが。




カラスの家族

あれ? 一羽多い・・・!?

何と! 子ガラスが戻って来ているではないか。

お母さんの右側に止まっているのは間違いなく末っ子だ。 独り立ちしたと思いきや戻ってきたようだ。


カラスの家族

突然、飛び出す子ガラス。

それからじっくり観察していると、 子ガラスはこうして時々やって来てはまた何処かへ飛んで行くことを繰り返している。 家族が一緒にいる時間はとても短いが、まだ完全に独り立ちはしていないようだ。

左に止まっているのはお母さんだが、 このお母さんは末っ子に甘いようだ。 無理に追い出すのではなく、暖かく見守っているように見える。

子ガラスは巣立ちから4か月以上も経過するのに未だに独立していないが、これには理由がある。

春に早くに巣立つとエサの豊富な夏に独立できるが、 今年のように巣立ちが遅いと成長する前に晩秋に差し掛かる。

子ガラスが最初に迎える冬は最大の試練。 それを乗り越えさせるための親心だろう。


そして季節は晩秋へ

秋雨の季節がやっと終わったと思ったら急に寒くなった。 今年は秋の快適な期間がほとんど無いままに真冬へと突入しそうだ。

柿木

今年は庭の柿の木が豊作だ。

昨年はほとんど実を付けなかった反動なのか、 今年は収穫しきれないほど実った。

余って熟した柿を鳥や狸が食べに来る。


鉄塔のカラス

ハシボソの家族はというと、 最近は子ガラスを追い払うのを諦めたようだ。

親子三羽で一緒にいる姿を頻繁に目にするようになった。 長男は完全に独り立ちしたのか、以降、まったく見ることはなく、ここにいるのは末っ子だ。


鉄塔のカラス

ハシボソのお父さんが時々こうして子ガラスを追い立てるが・・・。


鉄塔のカラス

子ガラスは直ぐに戻ってくる。

「ボクは絶対にお母さんと一緒にいるんだ!」という強い意志が伝わってくるが、 こいつも相当図太い神経の持ち主である。

カラスにとっても図太さは長生きの秘訣なのだ。


鉄塔のカラス

早朝、エサ台にエサを置くと、三羽で飛んで来る。


イケメンなカラス

まず最初に現れるのはこのお父さんだ。 彼は体格も立派で顔つきも精悍である。 カラス界のイケメンといったところか。

だが、このイケメンな風貌とは裏腹に彼はセコい性格の持ち主である。


イケメンなカラス

とろりと半熟に仕上げた卵黄は彼の大好物だ。


イケメンなカラス

ものすごい威圧感を放ち、他の家族を寄せ付けず卵黄を独り占めするお父さん。

子育ての季節は家族への配慮も見られたが、 それ以外の彼は基本的に自己中心的である。


イケメンなカラス

その間、お母さんと子ガラスは木の上で見ているだけ。 右のクチバシの長い方が子ガラスだ。 一ヵ月前と比べると顔つきが大人になり、もう立派なカラスになっている。

そして左がお母さん。 このお母さんはとても優しい性格である。しかしそれが子ガラスの独り立ちを遅らせているのだ。


イケメンなカラス

自分だけ食事を済ませて満足し、ゆっくりと立ち去るお父さん。 その背中からはセコさが滲みだす。 イケメンにロクな奴がいないのはカラスの世界も同じ。


別の日の監視カメラには、このお父さんの「自己中心的かつ亭主関白」ぶりを如実に捉えた映像が残っていた。


イケメンなカラス

11月8日
エサ台に止まっているのはお母さん。 ドッグフードを食べている。


イケメンなカラス

続いて子ガラスがやって来た。


イケメンなカラス

特に争うことなく分け合っているようだ。


イケメンなカラス

遅れてお父さんが登場!


イケメンなカラス

「グイッ」と、妻を押しのけ割って入る。


イケメンなカラス

そして何と!

「えーい、どけっ!」と、ばかりに妻を足蹴にしたではないか!


イケメンなカラス

さらに体を押し付けて圧迫するお父さん。

その隙にドッグフードをむさぼる子ガラス。


イケメンなカラス

エサを独り占めしたいお父さん、 今度は全力で妻を蹴り飛ばす!

自分よりも先に食事をはじめていた妻にカッとなったのだろう。

昭和の頑固おやじのようなカラスだ。


イケメンなカラス

理不尽な亭主関白ぶりに家族はみな委縮してしまった。 お母さんは斜めになりながらの食事だ。

だが、こんなお父さんにも頼もしい一面がある。 縄張りに侵入するカラスや鷹を排除するのはお父さんの役目だ。

また、ごく稀にではあるが愛妻家の側面を見せることもある。



一家だんらん、とは言い難い家族の姿。 だが、この何気ないシーンが家族が集う最後となった。

最後まで独り立ちせずに家族と過ごした末っ子だったが、 ついに姿を見せなくなったのだ。

末っ子の姿はもうどこにもない。

巣立ちから5ヵ月もの間、一緒にすごした家族についに別れを告げたのだ。

これから初めての冬を迎える末っ子。 食料となる虫や木の実も無い、まさに生涯で最大の試練を迎えることとなる。

だが、図々しく甘え上手な末っ子なら、 他のカラスともすぐに仲良くなるだろう。 そしてこれを乗り越えてこそ、立派なカラスになることを許されるのだ。

追伸

子ガラス

これは11月22日の定点カメラの画像。 末っ子が一羽でエサ台に来ている。 だがエサ台にはすでに何も無い。

余程腹を空かせているのか、 板の上に僅かに残るエサの破片を一生懸命に拾っている。

もう、両親は助けてはくれない。 独りで生きていくしかないのだ。


そして、これが末っ子を捉えた最後の姿となった。


~完~


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2018年2月4日公開

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