*この記事は改訂前の古い情報です。新しい記事は こちら
カラスは全身が黒い羽で覆われている。 この黒さは街では目立つが、 生物の配色に無意味なものは無いのである。つまりこれも保護色だろう。 例えば冬。木の葉が落ちた森林はモノトーンの風景だ。 その枝に止まっているカラスを見つけるのは意外と難しい。 鷹などの天敵から身を隠す効果があるのだろう。
それではこの黒さはいったい何なのか? 電子顕微鏡を使って解明してみよう。
さて、ここに一枚の風切り羽がある。 昨年の換羽の時期に我が家のカラスから抜け落ちたものだ。
↑よく見ると、中央のメインの支柱から無数の繊維が左右に伸びて羽を形成している。 なにやら複雑な構造が隠されているようだ。これより先は肉眼では見ることができない。
ここから先は走査電子顕微鏡で拡大してみる。
↑先ほど肉眼で見ていた繊維がこれだ。
繊維と繊維の間隔は0.5mmだ。
そしてさらに、それを支柱にして微細な線維が左右に伸びている。
どんどん拡大してみよう。
↑構造が見えてきた。さらに拡大しよう。
↑非常に薄い板状の構造が重なっている。
これが羽を形づくる最小単位の構造だろう。
カラスの羽には青紫の光沢があるが、
その原理はおそらくこの層状構造がもたらす干渉色だ。
それにしても風を通さず軽量で頑丈そうだ。
ボツボツと見えているのは大気中の微細なホコリだ。
ここまでくると、この羽の内部構造はどうなっているのか?
そこに興味がわいてくる。
それでは次は羽を切片化して透過電子顕微鏡で内部を見てみよう。
↑これが透過型電子顕微鏡で見た羽の内部構造だ。
微細な線維が縦走しているが、これはおそらくケラチン線維だろう。
人間の髪の毛と似たようなものだ。
そして黒い顆粒が一面に見えているが、これはメラニン顆粒だ。
そう、カラスの羽が黒く見えるのはこのメラニン顆粒のおかげなのだ。
2018年1月28日改訂版 に移行
2016年12月3日公開