謎の飛行物体を見送り鉄塔に目をやると、 鉄塔のアームから一羽のカラスがフワフワと飛んでいくのが見えた。
「あれは親鳥かな?」
「違う!さっきのはヒナだ!」
よそ見をしている間にヒナが飛び立ったのだ…。
あの謎の飛行物体が憎い。
しかし私はこの目でしっかりと見た。
ヒナが飛んでいく姿を・・・。
しかたないので図で説明する。
ヒナはフラ~と風に吹かれるように鉄塔を離れたかと思ったら、 懸命に羽ばたきを始め、図のような軌道で向こうの鉄塔まで飛んで行った。
午前6時12分のことだ。
ヒナは途中の電線にとまろうとしたがバランスを崩し、その下に落下していった。
悪いことに、あそこは他のカラスの縄張りだ。
すぐにハシボソ夫婦が駆け付けたが、そこはやはり隣のカラスの縄張り。
隣のカラス夫婦と激しい争いとなった。
ヒナのことが心配だ。
一部始終を見ていた巣のヒナたちは怖くなったのか、それ以降、動きがなくなってしまった。
そして動きがないまま時間が過ぎていく
13時25分
相変わらず風は強く厳しいコンディションである。 先に巣立ったヒナも行方不明のままだ。 両親はここにいるが、すでに諦めたのかもしれない。
三番目のヒナも巣から出てきた。
その時!
何の前触れもなく二番目のヒナが飛び立った。
正確に言うと、飛び立ったというよりも足を滑らせたような感じだ。
鉄塔のフレームが邪魔でうまく羽ばたくことができず、 どんどん落下していく。
その様子を心配そうに見つめる三番目のヒナ。
大きく翼を広げているが、これにより落下速度は抑えられた。
強風に煽られ鉄塔の外に飛び出した。
なんとか体勢を整え、安全な場所へ軟着陸を目指す。
鉄塔の下の芝生に落ちたようだ。
すぐにお父さんが駆けつけ、屋根の上から様子を確認している。 あの辺りに落ちたならヒナはおそらく無事だろう。
またしても危なっかしい巣立ちだった。
その様子を見ていた三番目のヒナは、すっかり怖気づき巣に戻ってしまった。
13時50分
鉄塔の下を見ると、先ほど落下したヒナが屋根の上にいるのが確認できた。
ケガもなく無事のようだ。
14時17分
お母さんが巣のヒナに食べ物を運んできた。
お母さんは巣から出るようにヒナに促している。
それに応え、翼を動かすヒナ。
「さあ、あとはお前だけだ。」
ヒナはアームに飛び移った。
あとは勇気を出して飛ぶだけだ。
あれ?
ヒナはバタバタと巣に戻ってしまった…。
それから30分くらい観察しているが、まったく頭を上げない。
すっかり巣の中に塞ぎこんでしまったようだ。
早くしないともうすぐ夕方だ。
その間、お父さんが二番目のヒナに給餌している。
ヒナは自力でこの場所まで移動してきたようだ。
14時50分
鉄塔の下を見るとヒナが一羽、ヨタヨタと飛んでくるのが見えた。
「あれは最初に飛び立ったヒナだ! 無事だった!」
さっそくお父さんが給餌に向かう。
2019年5月14日上から7枚目の写真を差し替え。
2019年5月13日公開