今回はFRP防水床を施工する。 技術的には簡単だが、床に施工する場合、やり直しができないので失敗が許されない作業だ。 また、途中で中断もできないので、入念な準備が必要になる。
金曜日の夕方から作業を始める。
まず最初に、プライマーを塗り込む。
キシレン特有の強烈な臭いで頭が痛くなる。
時間をかけずに素早く作業する。
プライマーは土台の材質別に種類が分かれており、
今回は木材用を使用する。
プライマーは直ぐに乾く。
つづいてガラス繊維を敷き詰める。
土台の端の部分にはハサミでカットした部分を当て、
その他の部分は手でちぎり、
ちぎった端同士をこうして重ね合わせる。
ガラス繊維は非常に細く脆い。
画像で見ると髪の毛くらいに見えるが、
最小単位の繊維はそんなものではなく、
桁違いに細い。
これが、ちぎった時に分解して空中に舞い上がり、
知らない内に衣服に付着し、チクチクと肌に刺さる。
DIYでFRPが敬遠される理由の一つだ。
FRPの主体となる樹脂を浸透させる。
画像の上の方は、樹脂がガラス繊維に浸透して透明になったところ。
そう、ガラス繊維は白く見えるが、光の屈折でそう見えるだけで、
液中に浸かると本来の透明になるのだ。
樹脂の種類は不飽和ポリエステル。化学の講義で頻繁に耳にするポリマーだ。
硬化剤を入れると短時間で重合が加速(硬化)するので、
1Lずつ作りながら作業を進める。
作業は日没後まで掛かった。そして一夜明けて土曜の朝。
カチカチに硬化している、
はずだった・・・。
だが、昨夜私は、致命的なミスを犯していたのだ。
そう、樹脂を4回に分けて作ったが、途中で一回、
硬化剤を入れ忘れたのだ。
絶対にやってはいけないミスだが、
樹脂を扱う職人は、一生に一度はやるとおもう。
例えるなら、鍋にお湯を入れるのを忘れて火に掛け、沸くのを待つような感じ。
それぐらいマヌケ。
昨夜、作業しているときから何となく、
樹脂の粘度に違和感を覚え、
硬化剤を入れ忘れたかも?と、思った。
だが、こういう場合は余計な処置をするよりも、
そのまま最後まで進めた方が良い。
そして後で、硬化剤の入れ忘れたエリアを剥ぐのだ。
そこだけ固まらずにブニュブニュなので、こうして簡単に剥がれる。
剝ぎ終わるとこのように、
陸地と海のようにハッキリと硬化剤を入れ忘れたエリアが浮かび上がる。
剥いだ後はアセトンで未重合の樹脂をふき取る。
この時、使用したアセトンは1L。
この規模なら良いが、
大型バルコニーの施工でやらかしたら大損害だろう。
次に二層目の作業に移る。
やることは一層目と同じ。カチカチに固まった樹脂の上にもう一度、
ガラス繊維を敷く。
この転圧ローラーというもので、樹脂を染み込ませながら、 空気を抜いていく。 空気が抜けると繊維が透明になる。
樹脂の硬化を待つ間、外のきれいな空気を吸う。
樹脂は臭いのだ。
最近、天気の良い日は庭にモズがやってきて、
こうして地面をキョロキョロと見わたし、獲物を探している。
実に落ち着きの無い鳥だ。
カメラを向けると、モズもこちらを見る。
可愛い小鳥だが、獲物に対して残酷な仕打ちをするらしい。
昨年、「MOZU」という、つまらない刑事ドラマがやっていたが、
その時に「モズの速贄」という、
捕えた獲物を枝に串刺しにする、という習性が紹介されていた。
ドラマ自体は退屈だったので途中で観るのを止めた。
完全に硬化するまでの間に、木の継ぎ目をコーキングする。
コーキングガンでシリコンを塗付けて、コテで整える。
本当はマスキングするが、ここは省略。
木の接合部の隙間に水が溜まるので、
このような部分は埋めた方が良い。
樹脂が硬化したら、軽くペーパーを当てて下地を整え、
トップコートを塗る。
この塗料は非常に粘度が高く、文字通りベタヌリ状態である。
厚くベッタリと塗る感覚はとても気分が良い。
そして一夜明けて今日の朝。
塗り終えて硬化した状態。
きれいなグリーンの床になった。
FRP二重層の床は固く、まるでコンクリートのようだ。
すこしボコボコしているが、
きれいにしたいのなら、トップコートする前に全面に粗くペーパーをかける。
だがそれは、ガラス繊維と樹脂の粉塵が舞い上がり、
劣悪な作業なのだ。
だから状況が許すのならペーパーがけは最低限に済ませる。
そして、樹脂の端の部分や、 金属の排水口の部分はコーキングで埋める。 FRPは端部が水などに触れないように、こうして保護した方が良い。
木に打ったネジの部分もコーキングする。
このような窪みに水が溜まり、腐食の原因になるのだ。
とにかく、木の部分に水を滞留させないことが重要。
床が終わったら次はウッドデッキを造る。
まずは、こうして足を組み立て、水準器で水平をとる。
そしてデッキ材を等間隔で並べてみる。
目測で並べたら、一気にビス留めする。
非常に簡単な作業であり、時間をかけるところではないのだ。
つづいて、本体と同じ色に塗装した。
良い感じだ。
夏になったらここで、
カラスと一緒にビールを飲みたいね。
今回の作業はここまで。
そして先週の日曜から工事を再開。
カラス小屋には扉を取り付けて、ほぼ完成。
次は、我が家のウッドデッキとカラス小屋を結ぶ廊下を造る。
そして午後からは枝を設置した。 枝の配置は最も重要なのだ。 地ベタのニワトリと違い、枝の上だけが生活の場なのだ。 飛べない鳥の場合、このように低めに平行に配置する。 一回では決まらないので、実際にカラスを入れてみて様子を見て調整する。
さっそくアディを投入してみると、
興奮して足をつまずき、いきなり床に落下。
FRPの床に爪が立たずに起き上がれず、
パニックになってしまった。
生まれて初めて触れた滑る床に心底、恐怖を覚えたようだ。
床に激しく羽を叩きつけた結果、風切羽を2本、根元から折損。
新居初日から流血の事態となった・・・。
風切羽を折るというのは、
鳥にとって最もテンションが下がることだ。
お馬鹿で陽気な彼も、すっかり落ち込んでしまった。
だが、風切羽は羽毛よりも生えるスピードが速く、
あまり心配はいらないのだ。
仕方ないので、床に格子状に足場を造ってやった。
掃除が面倒になるけど仕方ない。
お風呂はこんな感じで、少し浮かして設置した。
排水口は室内にあり、排水を利用して床を流すようになっている。
外の壁のバルブを90度回すと排水される仕組みになっている。
手を汚さずに簡単に排水できるのだ。
引っ越してすぐに、ハシボソガラスの夫婦が様子を見に来た。
その内の一羽がアディに何か話しかけている。
拡大するとこんな感じ。
お互いにリラックスした様子で、 声を出さずに無言で交信しているようだ。
その様子を離れた木の上で見ていた相方が、カメラに気付き、 警戒音を上げる。
カラス同士にしか分からないこともあるのだろう。
そして引越しから一週間たった今日。
アディの怪我は完全に治ったようだが、 「床」恐怖症になり、まったく下に降りられず、 あれ以来、水浴びもしていない。
表情も虚ろでテンションは低いままだ。
長かった工事は終わり、無事完成。
設計当初に目指していたような、寺のお堂のような感じは皆無である。
それどころか、和風なのか洋風なのか、 はたまた何処の国の何時の時代の建物かすら分からない雰囲気だ。
装飾が何もないので地味だが、カラスの小屋ならこんなもんでしょう。
夜は廊下に設置したソーラーライトが点灯し、ムーディーな雰囲気に包まれる。
昨年の11月に着工してから3か月かけて完成した。
作業はほとんど日曜日だけだったので、実質、作業日数は12日間くらいかな。
そして、気になる費用は総額35万円也。
費用の大半は木材代だが、それ以外で高額なのが、 屋根材3万円、FRP材料3万円、ステン溶接金網5万円、コンクリート1万円。
プロに頼んで同じものを依頼したら、おそらくプラス100万円は掛かるでしょう。
以上、カラス小屋の制作2017でした。
こちらはアディ。 新築したカラス小屋に引越して以来、 頻繁に枝から落ちてケガをするようになった。 その度に生えかけていた風切羽が折れてしまうのだ。 最近は尾羽も痛めてしまい、 ご覧の通りボロボロになり、 カラスとしての威容が失われている。
旧カラス小屋に比べると、枝の高さが全体的に30cmくらい高くなっているが、 これがいけなかった。
そこで枝の配置を変えて、 床の方まで階段状に枝を設置してやった。
日頃のカラスの動線をよく観察し、見極め、 計算しつくした配置だ。
だがそれは徒労に終わった。
アディは足を滑らせて落下しているわけではなかったのだ。 以前から何となく感じていたが、 このカラスは時々、飛べないことを忘れてしまうのだ。
私が帰宅してカラス小屋に近づいてくるのを見て、 興奮しておもわず飛び上がるが、次の瞬間、 アディは「あっ!」という表情を見せながら床に落下するのだ。
自分が飛べないことを忘れたまま飛び上がり、 次の瞬間に我に返るが時すでに遅し・・・。 床に羽を叩きつけるのだ。
ケガをするのはいつも左側だ。 元々、骨折の影響で羽がうまく動かないうえに、 今は風切羽が欠損しているので、 余計にバランスが悪いのだ。
ご覧のように、またしても成長途中の風切羽を折損してしまった。 血がポタポタ垂れている。 ストローのように見えているのは成長途中の羽の軸で、 ストロー状の筒が伸びた後に先端から羽が展開してくるのだ。 成長途中のこの段階は血管が通っているので、 損傷するとこのように出血する。
枝の配置には最善を尽くしたが、アディがこの調子ではどうしようもない。 だからと言って、この状況をこのまま放置するわけにもいかず・・・。
枝を極端に低くすればストレスを与えるだけだし・・・。 こうして10日間ほど考えた私は最終的な結論に達した。
その結果がこちら ↓
カラス小屋の窓の高さに網で仕切りを入れ、 ロフトのような二段構造にしたのだ。
金網は一部を段違いに設置することで、 今まで通りに床にもアクセスできるようにした。
こういう時に一番乗りするのは決まってアディだ。 好奇心が旺盛である。 さっそく金網に降りて確かめる。
アディの口が開けっ放しなのは、 驚きを隠せずにいるからだ。
「今まで届かなかった場所にも手が届く。」
こんな仕切りをいれたらストレスだろうな、 と心配していたが、 どうやらその心配は要らなかったようだ。
意外にも好評である。
カラス目線で言うと、
「二階建てになり床面積が二倍!」
と、いうことだろう。
2017年7月16日ページを追加
2017年1月3日公開