カラスってどんな鳥?

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カラスは街中でもっとも目にする野生動物だ。 日本の風景に溶け込んでいて野生動物なのに、もはや何の違和感もない。 映画やドラマの中にもカラスの鳴き声が違和感なく混ざっている。 だがその生態は一般的に知られていないところも多い。 このコーナーではそんなカラスたちの特徴を紹介しよう。

ハシブトガラス

よく見ると異なる二種類のカラス

左がハシブトガラスで右がハシボソガラス。 街中で見かけるカラスはこのどちらかの種類。 名前の通りクチバシが細い方がハシボソガラスで太い方がハシブトガラスだ。 どちらも似たような鳥だが完全に異なる種であり雑種は存在しない。 詳しくは ハシボソ?ハシブト?をあわせてご確認を。

怒るカラス

喜怒哀楽が激しい

左は縄張りを侵犯されて激怒しているところ。右はリラックスして機嫌が良いとき。 両方とも同じ個体だが、一日を通して機嫌の変化は激しい。 縄張り意識が強く、飛来する他の鳥に攻撃を仕掛けて追い払う。 子育て中は特に気性が荒くなり、危機が迫ると相手が人間でも容赦なく威嚇する。

カラスの夫婦

夫婦仲が良い

画像はハシボソガラスの夫婦。 カラスは大人になると相手を見つけ、 一度夫婦になると何年も離れることなく一緒にいる。 そして毎年、子育てをする。 危険が迫るとお互いに鳴き声で知らせたり、 協力して鷹を追い払ったりもする。 子育て以外の季節も二羽で行動しているが、 これは夫婦愛というよりも信頼関係のある二羽で協力した方が生きる上でリスクが少なく、 効率よく餌を取れるためと考えられる。
注意深く観察してみると夫婦間の力関係は対等ではなく、 エサを食べる順番が決まっているなど微妙な上下関係がある。 これは意外に思えるが、我々人間にも当てはまるのでは? かかあ天下、あるいは亭主関白など・・・。 互いの関係には必ず勾配が生じるのだ。 いずれにしてもカラスの夫婦は互いに絶対的な信頼関係にあるのは間違いない。

飛行するカラス

意外に高い飛行能力

ゴミ漁りをしている姿をみると何ともドンくさいイメージがあるが、 実はカラスの飛行能力は相当に高い。
状況に応じて垂直方向に離陸したり、また急制動、そして急旋回などアクロバット飛行が得意だ。 とく喧嘩している最中にフェイントをかけて下方向に鋭角にターンするのは見事である。 さらに風切音を抑えて飛ぶことも可能で、 気が付くとヌラーっと背後に迫っている、ということも多々ある。 速度は猛禽類にまったく及ばないものの、 フリースタイルとして総合的に飛行能力を計るとカラスの方が上かもしれない。

真夏のカラス

暑いのは苦手

夏の炎天下。木に止まっているカラスが口を開けっ放しにしているのをよく見かける。 実はカラスは暑いのが苦手なのだ。 真っ黒な体に太陽光を一身に受ければそれは暑かろう。犬と同じで口を開けて汗を飛ばしている。 木の下にいるとカラスの唾液というか汗が落ちてくる。 暑さに弱いと言っても熱中症で死んでしまうほどでもなく、 こうして口を開けながらうまくやり過ごしているのだ。

卵を食べるカラス

意外にグルメ

残飯を喜んで食べている姿を見ると、食通とは程遠い印象だ。 だが、何でも好んで食べるのかと思いきや、実は非常に味覚が鋭い。 好き嫌いは明確で嫌いなものは目の前に出されても食べない。 肉類は新鮮なものを好み、熟成肉は避ける傾向にある。 初めて食すものは、まず咥えて舌で入念に確かめてから食べる。
カラスがゴミを漁った跡は非常に散らかっているが、 これはゴミを全部ひっぱり出してから、食べられるものを取捨選択するからだ。 つまるところグルメというよりも、危ない食品を避けるため、雑食故に身についた能力だろう。 食べられるか?危険か?の判断はまず目視で色、艶、形から判断し、 最後は鋭い味覚で判定するのだ。
カラスの好物
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のど袋

リスのようにエサを口の中に貯める

のど袋が膨らんでいる。 カラスのこの部分は薄くてよく伸びる丈夫な皮膚でできており、 リスの頬袋のように餌を蓄えることができる。 一度に食べきれないエサはこうしてのど袋に貯める。 そして安全なところに運んで吐き出してから改めて食べる。 それでも余るほどのエサにありついたときは、 のど袋いにれて運んで誰にも見つからない所へ隠す。 夫婦間でエサを分け合ったりもする。1歳までの若いカラスはのど袋の容量が少ない。

遊ぶカラス

遊ぶのが好き

これは飼育しているカラスだが、食べることの次に遊ぶことが好きだ。 ガラクタ収集やヒモで綱引きなど。 そして最も好きなことは、あらゆる物の分解作業。靴など人が身に付けているものを破壊しまくる。 また、人が大切にしている時計やペン、スマホなどのアイテムを欲しがる。 が、すぐに飽きる。
ペットとしての印象は猫よりも犬に近い。

カラスの水浴び

実はとてもきれい好き

河原などでカラスを観察していると時々、遠くで水浴びする姿が見られる。 だが水浴び中は警戒心が高まるため、 その姿を見られたくないようでカメラを近づけることが難しい。 画像は飼育しているカラスが水浴びしているところ。 人に慣れたカラスでもあまり水浴びを見られたくないようだ。 飼育環境下のカラスにおいて、水浴びは一日平均2回。 真冬でも全身、頭まで水に浸ける。その間15秒くらい。 そのためカラスはまったく体臭がしない。 カラスはきれい好き、をあわせてご確認を

カラスの爪

意外に屈強な足

カラスは猛禽類ほどではないが屈強な足を持っている。 掴む力は意外に強く、ネズミくらいの小動物なら絞め殺すことも可能だろう。 攻撃の際は猛禽類と同様に主に足を使う。

カラスのクチバシ

頑丈なクチバシ

画像はハシブトガラス。クチバシの先端が下に曲がっていて 動物の肉を引き裂くのに適している。 噛む力も強く、 これに本気で噛まれると皮膚にざっくりと歯形が付き流血の事態となる。 そして先端が欠けると、再び爪のように伸びてくる。 カラスのすごいところは、 噛む力というよりも物を咥えて引っ張る力が異常に強いことだ。 クチバシで咥えて足で踏ん張り引っ張ることで相当な重量の物を動かすことができる。 大型動物の死骸から肉を引きちぎるために発達したと思われる。 そして猛禽類と違い尖ったクチバシが攻撃の道具にもなり、 また長さも絶妙で手のように器用に使うこともできるのだ。

カラスは鳥類の理想形?

鳥としてバランスが良い

カラスと他の鳥をテキトーにグラフにしてみた。 鷹やハトは一長一短であるのに比べると、 カラスはきれいな六角形になる。

カラスの能力

カラスに目立つ欠点は無い

鳥は進化の過程でそれぞれの環境に合わせて能力を高めてきた。 それは主に食料を確保するための能力だ。 水鳥ならば水中で魚を捕えるための足ひれとクチバシ、 鷹は小動物を追跡するための卓越した飛行能力と強靭な爪を獲得した。
だが、そのように目的に特化した身体は少なからず他の能力を犠牲にしている。 水鳥は防御力や攻撃力に劣り、 鷹は並外れた運動能力と引き換えにエネルギー消費量が大きく持久力がない。 しかも食事は活き肉のみという偏食ぶり。
ではカラスは・・・? 大型鳥の割には俊敏かつ多彩な飛行能力、ネズミ程度の動物を仕留める攻撃力。 危険回避能力、そして人間を上回る記憶力、仲間との協調性。 そして極めつけは雑食性がもたらす比類なき生存能力。 これ以上にバランスのとれた鳥は他に存在するだろうか? まさに欠点の無い鳥類の理想形と言っても過言ではない。

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更新履歴

2018年3月3日改訂版 に移行

2016年12月3日公開

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