子ガラスの追跡観察を諦め、待つこと二週間。 時々、子ガラスの声は近くで聞こえるのだが、なかなか姿を見せない。
そして巣立ちから18日目の5月23日夕方。ついに姿を現した。
両親の後をついて飛んできた子ガラス。 まだあどけない表情だが、もう十分に飛び方を覚えたようだ。 手前にいるのはお父さん。
この日は日中に強い雨が降り続き、今は雨が弱くなったところだ。
エサ台には煮干しが置いてあるのだが、すぐには取りに来ない。
あえて、じらしているのだろう。
簡単に獲物が手に入っては教育によくないからだ。
腹をすかせた子ガラス。
口を大きく開けて食べ物をねだっている。口の中はまだ赤色。
あれ?
お父さんはクルっと向きを変え、エサ台を背に歩き出した。
「簡単には食べ物をやらないよ」
という教育方針らしい。
だがそれだけではなく、何となく意地悪さがにじむお父さんの背中・・・。
でも子ガラスにとっては偉大なお父さんだ。
お父さんはすっかり無視を決め込む。
子ガラスを置いて屋根の向こう側に消えた。
必死に声を振り絞って訴えるが、 その鳴き声は「ビャー、ビャー」と、子ガラス独特の小さな声だ。
お父さんが戻ってきた。
人間社会においても、こういうタイプの大人は存在する。
教育熱心と意地悪が融合し、自分自身でも理解できない複雑な心境である。
子ガラスは自分で獲物を取ることができないので仕方がない。
嫌なら早く自分で獲物をとることをおぼえるしかないのだ。 意地悪なようだが筋の通った教育方針である。
子ガラスは我慢の限界。
お父さん、カッコよくエサ台にジャンプ!
期待に満ちた表情の子ガラス。
お父さんは一撃で小魚(煮干しだが)を仕留めた!?
だがしかし、子ガラスには与えずに飛んで行ってしまった。
呆然と立ち尽くす子ガラス。
この後、お父さん+小魚を追って飛んで行ったのであった。
2018年5月27日公開