*このページはカラスと法律に統合しました こちら
このページは「環境省監修改訂5版 鳥獣保護管理法の解説」をもとに記述したものであり、条文や法律の解釈もこれを引用している。他の法律を引用した部分はその法律名を記載した。
用語説明
狩猟鳥獣: カラス、スズメ、ムクドリなど合計48種の動物。
非狩猟鳥獣: メジロ、ウグイスなど狩猟鳥獣以外の動物。
救護という行為は鳥獣保護法に存在せず、捕獲行為しか記載がない。 この法律でいう捕獲とは、明確な意思をもって鳥獣を捕獲または殺傷するなどして自己の支配内に入れる行為をいい、原則として禁止している(第8条 鳥獣の捕獲等の禁止)。 そして捕獲の際には事前に捕獲許可を取る必要がある(第9条 鳥獣の捕獲等の許可)。
しかし目の前でケガをしたカラスがいる状況で、役所に出向いて許可申請の手続きをすることはほぼ不可能である。 結果として役所の言い分としては「無許可の捕獲」ということだ。 しかし、許可申請を出したとしても捕獲許可はほぼ下りない。 許可申請をするように言いながら許可を出さないのだから、きわめて矛盾した状態といえる。 さらには、ほとんどの自治体で傷病救護の制度からカラスを対象外としているのだ。
しかし指針には人道的な救護の精神を尊重するよう記載されているため、 救護を違法捕獲として取り締まることが実際には難しいのである。 ボランティアが堂々と救護活動をSNSで発信している背景にはこの指針の存在がある。
また第8条には例外の規定があり、狩猟鳥獣(カラス)の捕獲は条件を守れば許可なく行うことができる。 11月15日から2月15日までの期間で禁猟区以外であることが条件となる。 つまり冬季に山でケガをしたカラスを拾った場合は完全に合法となる(第11条 狩猟鳥獣の捕獲等)。
このことからカラスの場合は保護から何カ月も経過すると、いつどこで保護したのかの証明はできないため実際に訴追されることは考えにくい。 なお、第8条違反の公訴時効は捕獲行為の日から三年である(刑事訴訟法第250条2項6)。
世間でよく「違法飼育」という言葉を聞くが、狩猟鳥獣に対して違法飼育という罪状は存在しない。
違法飼育とは第19条「飼養の登録」の義務を無視して無登録で飼育している状態のことをいう。 しかし狩猟鳥獣には飼養登録の制度がないため違法飼育とはならない。 この条文はあくまで、メジロやウグイスなどの流通監視が目的であり、逆に獲物であり駆除対象でもある狩猟鳥獣は対象外なのだ。 つまり飼育の届け出は一切不要ということである。
もう一つ、第27条では違法捕獲した個体の飼養と譲渡を禁じているが、法律の解説には「本条でいう飼養とは、生きた非狩猟鳥獣を継続的に所持することをいい・・・」とある。 非狩猟鳥獣とは狩猟鳥獣以外のことだ。 つまり、たとえ違法捕獲されたカラスを飼育していたとしても、飼育していること自体に違法性はないのである(p.172より)。 この条文はあくまでメジロやウグイスなどが闇流通されることを防ぐことが目的なのだ。 したがって登録制度のない狩猟鳥獣に対してこの条文を適用することはできない。
このように狩猟鳥獣の飼育は法律で禁止されていないため、飼養許可証や登録証は存在しない。 ネット上で「許可証の取り方」や「飼育許可済み」などの記載がみられるが、あれは全てデマである。
鳥獣保護法では捕獲した動物の所有権についての規定はない。 そのため所有権については民法第239条「所有者のない動産は所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。」という条文が適用される。「動産」とは、不動産以外の物であり野生動物も含まれる。
つまり、傷病救護や捕獲により得たカラスの所有権は保護した人にある。
役所が行う放鳥の指示は第10条「許可に係わる処置命令等」を根拠としている。 これは違法捕獲された動物を開放できるようにするための規定であり、生態系の維持や個体の保護を目的としている。 しかしこれは個人の所有権を制限する行為であるため、命令を発動するには様々な条件がつく。
まず第8条に違反した事例が全て対象になるのではなく、第9条1項「鳥獣保護区内で捕獲するとき」の違反に対して発動するものである。 さらに、鳥獣の保護または管理のために必要であることが条件となる。 役所が強い権限を持っているかのように見えるが、違法捕獲された動物であっても開放命令を出せる条件は狭いのである。さらに、希少性のない狩猟鳥獣であるカラスに対して行政側が第10条を正式に発動することはほぼ不可能と言える。
つまり役所の放鳥指示は多くの場合、法的根拠のない「お願い」なのである。
ここで問題なのは「放鳥のお願い」であっても、一般の人には放鳥命令に聞こえることだ。 役人が発する言葉なので当然である。 しかし本来、第10条の発動には高度な法的知識と状況判断が必要とされるため、窓口の役人が安易に「放鳥してください」と口にするのは法的に極めて不適切と言える。
カラスの飼育が禁止だと思っている人は一定数存在するので、通報されることも考えられる。
その際に問われるのはカラスを取得した経緯である。狩猟期間と区域を守って保護した場合はそのことを伝えるだけでよい。 それ以外の場合、善意の傷病救護であることを強く主張し理解を得る必要がある。 説明が苦手な場合はこのページを印刷して役人に見せても構わない。 また、保護から三年以上経っている場合はすでに時効であるため、取得した日付を告げるだけでよい。
いずれの場合も、すでに愛玩鳥であり所有権が自分にあることを明確に主張することが重要である。 カラスであっても、愛玩飼育している状態であれば動物愛護法の保護下となるのだ。
<この記事を引用する際の注意>
このページに記載されている内容は、改訂5版鳥獣保護管理法の解説をもとに一般の方に分かりやすい文章にしたものです。
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『改訂5版 鳥獣保護管理法の解説』株式会社大成出版社, 2017年
2020年10月11日 カラスと法律に統合しインデックスから削除
2020年7月12日 公開