カラスの子育て2017 その3

カラスの巣立ち

6月3日
ハシボソガラスの子供たちが巣立ってから一夜が過ぎた。

周辺でハシボソガラスの声は聞こえるが、 子ガラスの姿は見かけない。 巣立ってすぐの子ガラスは、安全な場所で飛行訓練を行うのだ。 さっそく、どこにいるのか探してみることにした。


カラスの巣立ち

探すといっても、私にはカラス一家がどこに行ったのか、だいたい見当がついている。


カラスの巣立ち

竹藪を進み、池の東側を目指す。


カラスの巣立ち

ここ数日の豪雨のせいで森が荒れている。


カラスの巣立ち

池の畔にそって進むと、 少し開けた場所がある。

ハシボソガラスの鳴き声が聞こえてきた。 昨年もここで飛行訓練をしていたのだ。


カラスの巣立ち

この先に子ガラスはいる。

なぜ分かるかというと、一歩進むごとに、 親カラスが発する警戒音が強くなるからだ。

そう、子ガラスの位置は、 この警戒音を頼りに探すのだ。 金属探知機のように正確である。


カラスの巣立ち

ここで警戒音は激しさを増す。

見つけました。子ガラスだ。 枝に止まってまったく動こうとしない。 まだ小柄でハトと同じくらいの大きさだ。


カラスの巣立ち

子ガラスの特徴は、 クチバシはやや短く、瞳は角度により青く見える。 羽毛はボコボコと浮き上がり、尾羽が短い。 そしてこのように肩をすぼめている。 子ガラスの尾羽が短い理由は、 尾羽は風切り羽よりも伸びるスピードが遅いためだ。 それは巣のスペース効率からもその方が都合がよい。 両翼は折りたためるが、尾羽は折りたためず邪魔になるからだ。

だが、この子ガラスを見ると、 子ガラスにしては尾羽が長い。おそらく、 鉄塔からの一発勝負の巣立ちを考慮し、 親鳥が巣立ちのタイミングを遅らせたのだろう。 そう、できる限り成長させてから巣立たせて、 リスクを回避したのだ。

ところで、もう1羽の子ガラスはどこだろうか? 姿を見ないがおそらく周囲にいると思う。

ついでに親ガラスの姿も確認してみよう。


カラスの巣立ち

10mくらい離れた木の枝にとまっていた。 こちらはお母さん。


カラスの巣立ち

そしてお父さんも。

子ガラスが十分に飛べるようになるまでは、 縄張り内の狭い範囲で練習をさせているのだ。

だが子ガラスは四六時中、親鳥と一緒に過ごすわけではない。


カラスの家族

こうして両親だけで我が家の庭に遊びに来たりするのだ。

その間、子ガラスは縄張りでお留守番・・・。


カラスの家族

毎朝の恒例となった、アディからお父さんへのハンバーグの献上である。

関連ブログ→ 2017年5月13日 おすそ分け

この間、子ガラスたちはどのように留守番をしているのか?

この隙に森で待っている子ガラスを見に行ってみよう・・・。


カラスの家族

やっぱりここだ、同じところにいた。

池の畔から少し森の中に入った目立たない場所だ。


カラスの家族

落ち着きなく、周囲の様子を見ている。

私の存在に気が付いているはずだが、 まだ、人間を危険な存在とは認識していない様子だ。

近くの枝を移動したりはするが、どこかへ飛んで行くことはない。

おそらく、ここで待つように躾けられているのだろう。

ところで、いつ見ても子ガラスは一羽しかいない。 もう一羽の子ガラスはどうしたのだろうか? やはりあの末っ子は鉄塔からの巣立ちに失敗したのだろうか。

だとすると残念だが、これが鳥の世界の厳しさである。

成長の遅い奴は淘汰されるのだ。


カラスの家族

遠くに聞こえるお父さんの声に反応し、キョロキョロしている。


カラスの家族

両親が戻ってきた。 すごい剣幕で私に怒っている。

そしてそれを見た子ガラスが飛び立った。


カラスの家族

するとすぐにお父さんが後を追い、子ガラスの先に回り込む。

子ガラスの進路を遮るように飛び、行動範囲を制限するのだ。

子ガラスはお父さんの命令に忠実である。


カラスの家族

6月17日

ついに我が家の庭にも子ガラスを連れて来た。 徐々に行動範囲を広げているようだ。 だがやはり、子ガラスは一羽のみだ。

一同に集まった家族を見た私は、
「末っ子は巣立ちに失敗して死んだ。」と、確信した。


が、しかしその翌日・・・。

カラスの家族

遠くの電柱にハシボソ夫婦と子ガラスがとまっている。

あれ? 数が多いな・・・。

「一羽、二羽、三羽・・・、」よく見ると4羽いるではないか!


「末っ子よ! ワレ、生きとったんかいっ!?」


カラスの家族

末っ子(子2)は口を大きく開けて両親に甘えている。 下にいるの(子1)がおそらく最初に巣立ちした長男だ。

カラスの子供は成長の度合いにムラがあり、 たいていの場合、遅れて巣立った末っ子がこうして親にべったり甘えるのだ。 人間社会でも同じようなものだ。

そして成長の早い方は少し離れた場所にいる。 だから今まで見落としていたのだろう。


カラスの家族

末っ子が飛ぶ練習をしている。

今日は電柱の周囲を行ったり来たり。 離着陸の練習のようだ。

エサは親鳥からもらっているので、 捕食の練習はまだこれからだ。


カラスの家族

家族の様子を近くで見たいと思った私は、 後日、再び森に足を踏み入れた。

出迎えてくれたのはお父さん。


カラスの家族

私に気付き、警戒音を上げる。

お前と私は顔見知りだから良いではないか? と、言いたいところだが、 子育てに関しては妥協は許さないのだ。 人間が怖い存在だということを、こうして子ガラスにしっかりと叩き込む。

しかたないので、遠くから森を見渡せる場所を探し観察することにした。


カラスの家族

ここから家族の縄張りが見える。

80mくらいはあるが、先日の電柱よりはマシな距離である。

ここで姿を現すのを待つとしよう。


カラスの家族

待つこと数十分、家族全員で姿を現した。

やっぱり長男は少し離れた場所にいる。

末っ子は両親の目の前で「ビャー、ビャー」と甘えた声を出している。


カラスの家族

末っ子と両親だ。

長男は常に距離をとって行動しているので、 4羽集合の家族写真はなかなか撮れないのだ。


カラスの家族

こちらは長男。

今日で巣立ちから早くも三週間が過ぎた。

おそらく、あと2ヶ月くらいで親離れの時を迎えるだろう。 親離れといっても子ガラスが自発的に独立するのではなく、 一方的に縄張りから追い出されるのだ。

この子ガラスたちはまだ、それを知る由もない。


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2018年2月4日公開

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