カラスの飼育法 「カラスの性質」

ペットとしての性質

カラスはヒナから飼育すると人によく馴れて、 飼い主の指示はある程度理解するようになる。 この点は猫よりも優れており犬に近いと言える。 ただし、指示を理解できることと、 それに従うかは別の問題であり、気まぐれなカラスの気分次第である。

カラスの生命力は非常に強い。 インコなどのように南国から連れてこられ、国内で継代繁殖された愛玩鳥と違い、 まさに野生の生命力である。 多少の怪我は治療することなく治癒し、病気にもかかりにくい。 しかも雑食性であるため、猛禽類のように食べさせる物に困ることは無い。 これらのことから、 カラスは鳥類のなかでは最もペットに向いていると言えるだろう。

だが、猫のように飼いやすいかといえば、そうとも言えない。 カラスをペットとして飼育する場合、 知っておくべきことはカラス本来の性質である。

飼育する上での問題点

叫ぶカラス カラスの声量  街中で鳴いているカラスを見ると、 「なんだ、こんな程度か?」と、思うかもしれないが、 それが家の中で間近で聞くと相当な音量である。 特にハシブトガラスはよく通る高音が自慢だ。 屋外やベランダで飼うとなると、 夏の早朝は5時前から鶏のように鳴き始めるので、 住宅密集地では近所迷惑になる。
 それでも声量自体は人間の子供の叫び声と同程度であるため、 防音の効いた建物の内部なら鳴き声が外に漏れることは無い。 また、通常は夜中に鳴くことは無いので消灯後は静かだ。
 カラスにも個性があり、頻繁に鳴くカラスと、無口なカラスがいる。 特に人間に育てられたカラスには無口なものが多い。 これは、子ガラスが親の発声を真似して学習するため、 幼鳥の早い段階で人間に飼われることで、 鳴き方を教わらなかったことが原因である。

落ち着きがない  元々は活発な野生動物なので、落ち着きがなく騒々しい。 個々のカラスによって程度の差はあるが、 多くの場合は喜怒哀楽が激しく、欲求不満がたまると暴れたり鳴き続けたりもする。

物を壊す  特に三歳以下の若いカラスは好奇心が非常に強く、 気になるものは家具だろうとカーテンだろうと引っ張りまわし破壊する。 部屋の雑貨や小物を次々と壊していくのだ。 ただし、これについては子犬や子猫も同じである。 異なる点は、カラスは高いところにも手が届くということだ。

トイレの躾が難しい  鳥は基本的にトイレの躾が難しい。 それは、飛ぶ寸前や、あるいは緊張した時などに糞を放出する習性があるためだ。 しかもカラスは大型の鳥なので、一回に出る糞の量も多い。 そのため室内に一日放しておくと、部屋中が糞だらけになる。 これだけ聞くと酷い状況に思えるが、 唯一の救いは放出直後の糞の臭いが意外に臭くないことである。

昼行性  カラスは完全に昼行性であり、夜は熟睡している。 室内飼育においては、飼い主の夜更かしに付き合わせることは避けるべきだ。 夜は消灯し、カラスの睡眠時間を十分に確保してやる必要がある。 少なくとも8時間の睡眠が必要である。

水浴びは必須 カラスの行水  カラスは頻繁に水浴びをする。 そこで、タライのような大きな容器に水をはるのだが、 インコと違って大型のカラスの水浴びは豪快だ。 ザブッと水に体を沈め羽をバタバタさせるので、辺り一面が水浸しになる。

雑食性

食べ物については犬や猫よりも好みの幅が広く、味覚も鋭い。 その反面、他の多くの鳥のように「コレを与えておけば良い」というものが無い。 カラスにとってベストな「カラスフード」は存在しないのだ。

何を食べさせる?  とりあえずドッグフードを与えておけば問題はないが、 決まったドッグフードだけを与えるのはリスクが高い。 その製品の中にカラスにとっての必須栄養素が足りなかったり、 逆に何かが過剰に含まれている可能性もあるからだ。 リスクを回避するためにはドッグフード、キャットフード、 九官鳥フードなど複数の餌を混合して、あるいは交互に与えるのが良いだろう。 一日の食事量は猫と同等なので、体重比では相当な大食漢である。

カラスの食事 普段の食事は上記のようなもので良いが、 飼育下のカラスの場合は食べることしか楽しみが無いので、 たまには美味しいものを食べさせよう。
 カラスが好きなものは魚の刺身、和牛、馬刺しなど、 日本人の食通が好む刺身系が大好物だ。 その他、手羽元、卵黄も好む。 変わったものとしては、カスタードシュークリームが大好きだ。
 カラスは他の鳥よりも消化できるものが多いが、 砂糖や塩、脂肪などの許容量は不明なので、 成分や栄養が偏ったものは頻繁に与えない方が無難である。

食事量は? 食事量の目安は、猫と同じくらいかやや少ない程度。 エサの量が分からない場合は、とりあえず多めに与えて、 食べ残す量を観察する。 この時の注意点だが、 カラスは必要以上のエサを一度に食べることは無く、 余ればどこかに隠している。 よって、それも探す必要がある。

カラスに食べさせてはいけないもの  何でも喜んで食べるからといって与えていると、 実はカラスにとっては毒になるものもある。 その代表がチョコレートとアボカドだ。 鳥に与えてはいけない食品は他にもあるので、 愛玩鳥の飼育マニュアルを参考にするとよい。 ただし、カラスはそれらの鳥とは食性が全く異なるので、 鳥類共通に毒性を示す食材以外は、それほど神経質になる必要もない。

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基礎代謝が高い

カラスに限らず鳥類は基礎代謝が非常に高い。 基礎代謝とは、何もせずとも消費するエネルギーのことだ。 そのため、常に餌を切らさないようにする必要がある。 どれくらいの絶食に耐えられるかは不明だが、 一泊二日の旅行くらい大丈夫だろう?と考えて留守にしていると、 最悪の場合は餓死する可能性がある。 また、水をよく飲むので、水も切らさないように注意したい。

日光浴は必要?

「鳥には日光浴が必須である」と、言われている。 日光浴をしないとビタミンDが欠乏し、 カルシウムの吸収や代謝に異常をきたすというのが理由である。 だがしかし、鳥は全身を羽毛に覆われているために皮膚には紫外線は届かない。 太陽に露出した部分はクチバシと足と眼だけである。 その内、クチバシと足の表面は人間の爪と同様にケラチン線維でできており、 生きた組織ではない。 よって、太陽に露出される組織は眼球のみである。 このような状況で、はたして日光浴の効果があるかは疑問であるが、 昼行性であるカラスは、日光浴をすることで何らかの健康効果を得ている可能性は高い。 それは例えば、ダニやシラミ対策であるのかもしれない。

もう一つ重要な点は、昼行性の鳥は近紫外線領域の色域まで見えているということだ。 これは人間には見えない「色」であり、 人間は色を三原色の組み合あわせで見ているのに対して、 カラスは紫外領域を含めた四原色で見ているのだ。 つまり、我々人間とは見ている景色が全く異なるのだ。 カラスが普段見ているのは四原色がもたらす豊かな色彩の世界である。 だが、窓で紫外線を遮り、LED電球で照らされた室内にはそれが無い。 これがカラスにとってストレスになるかは不明だが、 室内環境がカラスにとって不自然な世界であることには違いはない。

心は意外とデリケート

憂鬱なカラス カラスと言えば「図太い」、「ずる賢い」など、 ストレスとは無縁の生き物と思うかもしれないが、 その屈強そうな見た目とは裏腹に、心は非常に繊細である。 特に自由を制限された飼育下では顕著であり、 飼い主が変わるなどの飼育環境の変化に敏感で、 些細なことに怯えたり、 ストレスを溜めて毛引き(自分の羽毛を引っこ抜く)や、 自咬症(じこうしょう=自分で自分を噛む)になったりする。
 図太く見えるカラスも心はデリケートである。 常に愛情をもって接してほしい。

躾(しつけ)

カラスの躾 鳥類全般に言えることだが、ヒナから飼育すると人に良く懐く。 これはヒナが生活の知恵を親鳥から教わるため、 親の方針に従うようにできているためだ。 その親が人間である場合、人間の環境に非常によく馴染むのだ。 さらにカラスは、ある程度は人間の指図を理解できるので、 犬と同様に躾は可能である。
 躾をするときも注意が必要で、 叱るときに激しい言葉を避けるのはもちろん、 勢い余って頭をド突くなどは論外である。 どんな駄ガラスだったとしても、褒めて育てるのがベストである。

 ただし、成鳥のカラスを保護して飼い始めた場合、 躾は難しい。 カラスは本来、非常に警戒心が強く高い自尊心を持っているからだ。 その場合はカラスの空腹時に、エサを褒美に躾をするとよい。

換羽と毛引き

犬や猫は春先から初夏にかけて冬毛が抜け落ちる。 カラスも同様に6月から10月にかけてゆっくりと羽毛が抜け替わるのだ。 そのとき、羽毛だけではなく風切り羽も抜け落ちる。 抜け方は個体差が大きく、 ごくゆっくりと気が付かない内に抜け替わるものや、 一度にごっそりと抜け落ち、剥げた地肌をさらすものもいる。 夏場に野外でハゲたカラスを見ることがあるが、 あれは脱毛症ではなく、単なる換羽である。

カラスの換羽 ただし注意が必要なのは、 飼育下のカラスは時としてストレスにより毛引きをすることがあるのだ。 その際はクチバシが届く範囲の羽毛を全て抜いてしまうことがある。
 換羽との見分け方は、抜けた羽毛に引き抜いた痕跡を見つけることだが、 見分けが難しい場合がある。 この画像のように、クチバシの届かないところの羽毛が抜けるのは、 毛引きではない。
  判定できない場合は、監視カメラを設置して人がいない時の様子を観察するしかない。 だがしかし、毛引き症に対して有効な治療法はなく、 ストレスを取り除く以外に方法は無い。 何がストレスになるかは、そのカラス次第である。 カラスはその屈強な見た目と裏腹に非常にデリケートな心を持っていることは、 先ほど述べたとおりだ。

カラスを飼うとカラスが寄ってくる?

カラス 昔から「カラスを飼うと近所のカラスが集まってくる」という話があるが、 その通りである。
 その場所が他のカラスの縄張りだった場合、 窓越しに部屋の中に見えるカラスを見つけると、 周囲のカラスが集合し騒がしくなる。 屋外の鳥小屋で飼育しているなら尚更である。 これは彼らの本能からの行動であり、抑止する方法は無い。 威嚇して追い払うのも避けた方が良い。 事態が悪化する可能性があるからだ。
 数日間は煩いのを我慢し、外のカラスたちが興味を失うのを待つしかない。 しばらくすると妥協して、「目障りだが害は無い存在」として受け入れられるはずだ。 それにはある程度の日数が必要である。

保護、治療後の放鳥について

「ケガをした子ガラスを保護したから自宅で治療し、 元気になったら放鳥しよう。」

カラスの巣立ちの季節によく聞く話である。

だが、放鳥には注意が必要だ。 成鳥を保護した場合は、飛べるようになったら元の場所に返せばよいのだが、 問題は子ガラスである。 人間の手で育てられたカラスは、カラス界の常識やルールを知らないため、 野生のカラスとコミュニケーションを取ることが難しい。 周囲のカラスの群れに快く受け入れられることはほとんど無く、 また、自力で食べ物を確保することも困難である。 さらに、放鳥した場所が他のカラスの縄張りだった場合、 侵入者として猛攻撃を受け追い出されるか、 最悪の場合はケガをして死に至る。 これでは何のために保護して治療したのか分からない。

人間にべったりと馴れてしまったカラスを野に放つのは「放鳥」とは言えず、 場合によっては単なる「遺棄」である。

飛べるようになったからと言って、安易に放鳥するべきではない。 放鳥するならカラスとしての基本的な姿勢を学ばせ、 さらに周囲のカラスの縄張りにも気を遣う必要がある。

カラスの感染症

「野鳥は感染症が心配だ」と、多くの人がそう思うだろう。 だが実は、鳥類と人間の共通感染症は意外に少なく、 野良猫を拾って飼うよりはリスクが低いと言える。 さらに言うと、ハトやカラスは街に群れており、 それらの鳥のフンは頻繁に空から降ってくる。 もし、本当に野鳥が危険だとしたら、とっくに感染症が蔓延しているだろう。

カラスが持っている病原体としてもっとも確率が高いのは、 コクシジウムという原虫である。 原虫とは真核の単細胞生物であり細菌よりもはるかに大型であるが、 それでも肉眼で見ることはできない。 コクシジウムは腸に寄生し、 ニワトリやインコなどの抵抗力の弱い鳥は腸炎を起こし死に至ることもある。 だが、自然界の野鳥には普通に寄生しているので、 野鳥の場合は特にこれが原因で死ぬことは少ない。 よって、飼っているカラスが元気ならば無理に駆虫するよりも放置した方がよい。 特に屋外で飼育している場合は、駆虫してもすぐにまた感染するので駆虫するだけ無駄である。 ちなみに鳥のコクシジウムは鳥以外には感染力がなく、 もちろん人間に感染することは無い。

トキソプラズマにも感染している可能性はあるが、 猫に感染したトキソプラズマのように、 頻繁に便から排出されるものではないため、 それほど気にする必要は無い。 これらの原虫は、その時の形態によっては消毒の効果が低い。 だが、その場合でも熱湯には弱いため、もし、気になるなら飼育ケージを熱湯で洗うとよい。

その他はオウム病が有名である。 これは先程までの原虫ではなく細菌によるものだ。 近年、再び注目を浴びているが、 人間に感染しても、人を死に至らしめるほど重症化することは稀であるため、 必要以上に神経質になることは無い。 ただし、抵抗力の弱い人は注意した方がよい。

病気やケガ

野生動物であるカラスは、 適切なエサを用意して飼育していれば大きな病気にかかることは少ない。 元から日本に生息している鳥であり、 オウムなどのように南国から連れてこられた鳥と比べて、気候が合うのだ。

ケガをして出血した場合でも、 数分もたたずに血が止まることが多い。 ただし骨折した場合は、ただちに獣医師に診てもらう必要がある。

動物病院について

鳥を診療できる動物病院は意外に少ない。 外科的な処置ができるところとなると、さらに少ないのが現状である。 カラスが怪我をしたり病気になったりすると、 場合によっては獣医師に診てもらう必要があるが、 この時の獣医師選びは非常に重要である。 獣医師の中には、実績や技術的な裏づけも無しに 「とりあえず連れてきてくれる?」と、気軽に言うこともあるからだ。

治療を受ける前に必ず「大型鳥の治療実績があるか」、 「その症例に自信はあるか」を獣医師に聞くべきである。 このような質問をされることで気分を害する獣医師もいるが、 それは自身の技術力よりもプライドの方が高い証拠である。 そのような獣医師は絶対に避けるべきである。

また、カラスはデリケートな動物なので、 動物病院に連れて行くこと自体が非常にストレスになる。 ひどい場合は一生消せないトラウマになる可能性もあるのだ。 よって、多少の怪我などで動物病院に連れて行くことは避けるべきである。


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更新履歴

2017年8月27日公開

旧カラスの飼育法は こちら

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