カラスブログ2017年12月3日 カラスの個体識別

野生のカラスを観察するときに困った問題がある。 何の模様も無く黒一色の体。 そう、カラスの外見がどれもほとんど同じで、個体の区別がつかないことだ。

だが、カラス同士は群れの中から間違うことなく仲間を識別しているのだ。

では、カラスたちは何をもとに互いを識別しているのか? 今回はカラスの個体差について探っていこう。

カラス

まずは最も簡単なこの二羽から。 私が飼育しているハシブトガラスのBANとアディだ。

ハシブトガラスは比較的個体差があるが、 特にこの二羽は特徴的であり、 離れた所から見ても判別できる。


カラス

拡大してみる。 左がBAN君で右がアディ。

BANは眼が丸く大きく、クチバシは上側が先端付近で急激にしなり、 下側のクチバシの底部分はまっすぐに伸びている。

右のアディは顔が小さいのに対してクチバシは相対的に大きく、 下側のクチバシは先端が上向きにしなっている。 アンバランスなシルエットはチョコボールのキョロちゃんのようだ。 そして眼は細く小さい。


カラス

次はこちら。 私が追跡観察しているハシボソガラスの夫婦だ。

左が夫で右が妻。 夫の方が体が大きい(全長が長い)。

この夫婦はどちらも個性的である。 夫は気性が荒く攻撃的であるが、妻はカラスにしては温厚で、 おっとりした性格である。


カラス

特にこの妻は特徴的であり、枝に止まった後、小刻みに羽を揺らす癖がある。 そのため100m以上、離れた場所から見ても判別できる。

さらに、なぜかこのようにお腹の羽毛を膨らませていることが多く、太って見える。 もちろん、実際に太っているわけではない。

鳴き声は甲高く、ハシボソガラスにしては声がきれい。


カラス

こちらは夫。

さきほどのように、妻はお腹の羽毛を膨らませるのに対して、 夫は頭頂部の羽毛を逆立てていることが多い。

羽毛を膨らませるのは感情表現の他、体温調節にも役立っている。

鳴き声は低く、太いダミ声である。



次に夫婦の顔を拡大して特徴を見てみよう。

カラス

左が夫で右が妻。

写真を並べてみるとほとんど同じに見えるが、よく見ると違いはある。 夫はクチバシが細長く端正な顔立ちである。 対して妻は、クチバシが太く短い。その違いはごくわずかだ。 頭のシルエットは羽毛の立ち具合によって変化するので、直接の判断材料にはならない。


次は今年の春に巣立った子ガラスたちを比べてみよう。

カラス

こちらも似たような姿であるが、 よく見ると弟はクチバシが細長くお父さんに似ている。 そして、兄はクチバシが太短くお母さんに似ている。 今年の子ガラスは「兄弟のわりに姿が似ていない」と言えそうだ。


このように同じ姿に見えるカラスたちも、よく見るとわずかだが違いがある。 では、カラス同士はどうやって100m以上離れた場所から互いを正確に認識するのか?  何か特殊な能力でもあるのだろうか?

その理由は簡単だ。

このように写真で見るとわずかな違いしかないように見えるが、 実際には立体的かつ動きのあるものを見ているのであり、 二次元の写真とは情報量が桁違いなのだ。 そして、それを抜群の視力で瞬時に読み取り識別する。 さらにカラスの場合は紫外領域の情報も加わり識別精度が増す。

カラスってすごい! と、なりそうだが、これは何もカラスに限った能力ではない。 色域と視力の差を除けば我々人間も同じである。 実際にカラスを観察するときも、 観察中の方が個体識別が正確にできるのだ。 逆に、観察中に撮影した画像を後で確認すると「あれ、どっちだっけ?」となることが多い。 これは三次元と二次元の情報量の差だ。 もっと分かりやすく身近なところでいうと、例えば、 大勢の集合写真の中から知人を探すとき、自信が無く間違うこともある。 だが、それが実際の群衆の中からは正確に見つけられるのだ。 つまり、静止画よりもリアルな動きがある方が識別が正確ということだ。

さらに、カラス同士の認識にはもう一つ重要なことがある。それは「声」だ。

カラスは頻繁に鳴き声を上げるが、 これは仲間同士の合図であることが多い。 カラスの鳴き声には個体差があり、この声紋によりカラスは互いを認識しているのだ。


ところで、カラスは雌雄に外見的な特徴がほとんど無く、雌雄を見分けることが非常に難しい。 だが、カラス同士では相手を正確に識別しているので、おそらく外見上のどこかに差異があるか、 あるいは外見上の特徴ではなく、立ち居振る舞いや声質の違いを認識しているのかもしれない。 いずれにしても、人間がそれを識別するのは非常に難しいことだ。

それなになぜ、この記事ではハシボソ夫婦の性別を断言できるのか?


カラスの交尾

それは今年の四月上旬、このハシボソ夫婦が交尾しているところを偶然、目撃したからだ。

カラスの交尾は上に乗るのがオスである。 そしてこの時、私は初めてこのカラスがオスだと認識した。

このように交尾の瞬間か、あるいは卵を産むところを確認しない限り、 雌雄の識別はできないのだ。


カラスの夫婦

交尾を終えた二羽。

4月2日のことだったが、 私はこの時までこの夫婦の性別を逆に認識していた。 そのため、それ以前の記事には夫婦関係が逆に記述され「恐妻家」となっている。

私の勘は外れたということだ




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2017年12月3日公開

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