管理人ブログ2017年5月28日 カラスと法律

鳥獣保護管理法の解説 この本は「鳥獣保護管理法の解説」という、法律の解説本である。 主に役所などで法律に関する知識を共有するために出版されている。 鳥獣保護管理法自体は理解が難しいものでもないが、 この本は具体的な事例を含めて説明しているので、 より分かりやすい。 野生動物に係わる人にはお勧めしたい。

 カラスを飼育している人は意外にも多い。 だが、飼っている人の多くは、 巣立ち間もなくケガをした幼鳥を保護した事例だろう。 そのような場合、 保護して飼育を続けることは、法律に照らしてどうなのか?

 当サイトにもカラスに係わる法律の相談が頻繁にあるが、 法律家でもない私が その都度、いい加減なことを言うわけにはいかない。 そこで今回は、この法律のなかで、あいまいな部分について関係する役所に確認をした。

*以下、「法律」とは鳥獣保護管理法のこと。
*「カラス」とは野生のハシブトガラスとハシボソガラスに限定する。
*飼養とは飼育のことである。

カラスの傷病保護とその後の飼養について

カラスはこの法律では狩猟鳥獣に指定されているため、 狩猟期間内に適正な方法で捕獲する場合には、捕獲の許可は必要ない。 それでは、狩猟期間外である巣立ちの時期に傷病保護した場合はどうなのか? このような事例に的を絞って調べてみた。

まずは、法律の解釈についてはこの法律を所管する環境省に、 実際の法律の運用については国内各地の役所に聞き取りをした。

環境省の見解

環境省としての見解は実に明確だった。以下に環境省の見解をまとめた。

まず、狩猟期間外に捕獲したカラスを「飼養している現状」が、 法律に違反するかについて、 狩猟鳥獣の飼養を禁止する条文が存在しないので、法律違反ではない。 さらに狩猟鳥獣については飼養の許可や登録の制度は存在しないため、 飼養の許可を申請する必要はない。

問題は狩猟期間外に傷病保護した行為についてだが、 カラスがケガをして飛べない状態の場合、 環境省指針である「傷病鳥獣救護に対する考え方」にのっとり、 個別に対応を検討することになっている。 それについては地方分権により、各都道府県に任せられている。

この法律は狩猟の適正化と、異常に増減する動物の管理を目的としており、 傷病保護については法律の趣旨から外れている。

ということだ。

突然の問合せにもかかわらず、実に迅速で歯切れのよい対応であり、 法律の解釈に至るまで熟知している。 さすがは中央省庁の役人である。

実際に法律を運用する役所の見解

つづいて、各地の役所の鳥獣管理をする部署に問い合わせてみた。 予想通り、どこの役所も概ね同じような歯切れの悪い対応だったが、 以下に、某政令指定都市の役人とのやり取りをまとめた。

私 :「怪我をしたカラスを保護したときの、役所としての方針を教えてください。」

役人:「まず、大原則である ”野の鳥は野のままに” に従い、拾わないでください。」

私 :「それは分かりましたが、それでも拾ってしまった場合は?」


以後、上記のやり取りを何度か繰り返す。
 針がとんだレコードのように・・・。


私 :「環境省指針で傷病保護についても尊重するように記載があるじゃないですか?」

役人:「 ・・・、(ぐぬぅ。) ひ、拾ってしまった場合は怪我が治り次第、放鳥してください。」

私 :「怪我が治らず、放鳥が不可能な場合は?」

役人:「法律の大原則として捕獲は禁止なので、放鳥してください。」


以後、 ”法律の大原則” という便利なセリフを何回も繰り返す。


私はここで一旦、電話を切り、 別の部署に動物愛護法について確認する。

そして、カラスについても愛玩を目的に飼育するならば、 動物愛護法が適用され「虐待や遺棄を禁止する。」ということを確認し、 再び同じ役所に問い合わせる。


私 :「それでも放鳥せよと言うのなら、その命令は動物愛護法に触れるのでは?」

役人:「(ギクッ!)しどろもどろ・・・。 わ、わたしは、そ、そんなことは言っていません。」

私 :「・・・わかりました。(さっきまで放鳥を連呼していたが?)」

私 :「では改めて。 その場合はどうしろと?」

役人:「そ、それは責任をもって終生飼養してもらうしかないじゃないですか。」

私 :「ではその際、捕獲の許可を”後出し”で頂けると?」

役人:「そ、それは法律的にできません。」

私 :「では何の法律を根拠に終生飼養を認めると?」

役人:「そ、それはー、えーっと、30日間の一時保護が繰り返し続いているという状態か、 あるいは・・・、 どうのこうの・・・、しどろもどろ・・・、」


ざっとこんな感じである。

ほとんどの役所がこのような対応であり、 同じようなやり取りを経験した人も多いと思う。 なぜこうなるかというと、 カラスを有害鳥獣に指定している地域では、 カラスを傷病保護の対象から外しているためだ。 だから、役所としては何の指導もできないのである。 環境省指針に基づいて策定するはずの基準を作っていないため、 根拠となる法律も基準も無く対応できない状態なのだ。 それなら、堂々とそう答えればよいのであるが、 さも自分たちに何かの権限があるかのように振舞うのだ。 そしてそれにより多くの人に誤解を与え、 「違法に保護したカラスを違法に飼育している」という、 罪の意識にさせてしまう。

まとめ

鳥獣保護管理法は狩猟の適正化と、 増えすぎた、あるいは減りすぎた動物の管理を目的にしている。 傷病保護については指針を出しているのみで、 法律の条文に明確な記載はない。 だから、この法律を根拠に傷病保護を許可することは不可能であり、 逆に取り締まることも法律の趣旨に反するため難しい。 行政としては何もできないというのが現状である。

よって、カラスの幼鳥を傷病保護して、その後も飼育したいなら、 その地域にカラスの傷病保護を定めた基準が存在するか確認し、 存在しない場合は役所へ届ける必要は無い。 そのような役所にはカラスの傷病保護を指導する能力が無いからだ。 その場合は個人で傷病保護を遂行するしかないのである。 具体的には、カラスの療養を続け完治して放鳥が可能ならば放鳥し、 それが無理ならば責任をもって終生飼養するということである。

それでももし、後から咎められたら? と、心配になる人もいるだろうが、 役所が処分を下すときには必ず証拠が必要になるのだ。 日数が経過してカラスが成鳥になってからは証拠の保全もできず、 取り締まりは実質不可能なのだ。 もし何か指摘された場合は、 法律のどの部分を根拠にしているのか確認することと、 こちらからは、 傷病保護に関する環境省指針と、動物愛護法をもって説明するのが良いだろう。 その際、獣医師による放鳥不可能という診断書など、 放鳥できない理由を客観的に示すことは重要である。

私が飼っているカラスたちは、 動物保護施設が怪我したカラスを保護したものだが、 その際、役所に問合せて問題がないことを確認している。 だが、それでも許可証というものは存在しない。 「責任もって終生飼養してくださいね」と、口頭で言う程度のことである。 なぜなら役所が出す許可証には法的根拠が必要だからだ。

繰り返すが結論としては、 傷病保護の申請や許可、 その後の飼養の許可というものは存在しないし、 もし、存在したとしても法的根拠(効力)がない。 そして、傷病保護は法律では曖昧な事例だが、 違法な捕獲として取り締まるほどの法的根拠もない。

今回の聞き取りを基に 「カラスと法律」を更新しました。

日本野鳥の会と鳥獣保護管理法

以下は余談であるが、 鳥獣保護管理法の内容は、 日本野鳥の会の提言が大きく影響している。 役人が頻繁に口にする「野の鳥は野に」というセリフがまさにそうだ。 国産のメジロやウグイスが一切、飼育できなくなったのもそれである。 日本野鳥の会というと、 単なる鳥の愛好家が集まった烏合の衆のようなイメージがあるが、 その実態は莫大な寄付金と、それをもとにした事業収益による豊富な資金力を持ち、 国のエネルギー政策にまで意見できる、 まさに日本最大級の自然保護団体である。

日本野鳥の会が掲げる「野の鳥は野に」という思想には私も同意見だ。 だが、私には自分の意見が絶対的な正義である、 などと主張することはできない。 なぜならそれは、数あるうちの一つの意見に過ぎないからだ。 日本野鳥の会は、野鳥を捕獲して飼育することを「悪」と決めつけ、 自分たちの理想である「野の鳥は野に」という方針を「正義」と位置づけている。 そして強大な影響力を駆使してそれを法律に反映させ、 自分たちの理想に背く「悪者」をその名の通り犯罪者に仕立て上げたのだ。

確かに、野鳥を捕えて狭い籠に入れて飼っている姿には違和感を覚える。 だが、日本において野鳥が減った原因は愛玩飼養ではなく、 主に環境破壊が原因だと私は考えている。 カスミ網猟が原因だと主張するならば、他の猟法を考案すればよいのであり、 捕獲と飼養の全面的な禁止を主張するのは、いささか感情的であり、独善的である。

人類の歴史を紐解くと、 数々の野生動物を家畜化し、または愛玩目的で飼養してきた実績があるのだ。 そして私はそれが「悪」とは思わない。

野鳥の保護を掲げるのなら、 メジロやウグイスのような「可愛い鳥」だけでなく、 今、膨大な数が捕獲、殺処分されているカラスについて、 もっと目を向けるべきだろう。 メジロがカスミ網で密漁されてはヒステリックに声を上げて怒っているが、 捕獲装置で大量に捕獲し殺処分されるカラスには、特にノーコメントのようだ。

現在、野鳥の中で最も苦境に立たされているのはどの鳥か?

人が直接、手を下し犠牲になる命の数でいえば間違いなくカラスだろう。 カラスにも悲しみや喜びの感情があり、 少なくともその辺の犬や猫と同等の感情を持った動物である。

わざわざ山に出かけて野鳥の保護活動などせずとも、 解決すべきもっと大きな問題が自らの足元にあるのだ。 都会に集合し増えすぎたカラスたちを 元の住処に戻す活動や、あるいはカラスとの共存など思いつくことはいろいろある。

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2017年5月28日公開

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